法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』○○なのに×× SP

米国からは、モデルや俳優やカメラマンで生計をたてるホームレス中年マーク・レイを紹介。若き日にヨーロッパにわたったものの芽が出なかったという。

時にファッションショーの仕事を依頼されるほどの腕前だが月収は十数万円ほど。家賃が高騰しつづけるニューヨークに住むことはあきらめ、こっそり立ち入り禁止の屋上に寝泊まりする。4万円の飲み代はともかく、ジムに出費しているのは肉体作りのためだけでなく、そのロッカー4つに私物を保管するため。さらにジムの洗面所で洗濯や体を洗うことまでする。
首座カメラの前や、街ゆく女性の前では自由人のように快活にふるまうが、孤独に眠る時は思考を止めていることを明かす。ドラマ『相棒』の傑作エピソード「ボーダーライン」を思い出させる。
取材中に『メン・イン・ブラック』のエキストラにすべりこむ。さすが大作だけあって端役でもスーツを専用にしたてる。ハリウッド映画の豊かさ、制作費が高騰しつづける意味がかいま見える。


インドからは貧しい家の生活を楽にするため、僧侶になるため家を出て修行をする16歳の少女を紹介。
スタジオの紹介者が語ったように冷たく乾いた高峰の情景は美しいが、過去の生活と現在の修業を交互に見せる構成は単調で、あくまでダイジェストを見ている気分。家畜のヤギがユキヒョウに襲われる過去も、ザンスカールの凍てつく谷川をワイヤーゴンドラで渡る姿も、どこかのドキュメンタリで見た印象にとどまる。
おそらくもともとのドキュメンタリが、じっくり尺をとって情景や人物を見せてはじめて真価を発揮するタイプなのだろう。良くも悪くも情報として新味はなかった。


ケニアのナイロビからは、巨大なゴミ捨て場の子供たちのクラッシック楽団ゲットー・クラシックスを紹介。小学校には給食目当てで子供たちが集まる貧しい社会。その学校もゴミ焼却の煙がひどい時は閉ざされ、給食もなくなってしまう。
そんなスラム街に、外国で14年をすごした女性音楽家ケニアにもどって教会の音楽校をたちあげ、今では200人以上が所属している。参加しているのは大学で音楽を学ぶことを夢見る少女や、ギャングから足を洗って弟の眼の治療代を出そうとする青年など。
楽器は先進国の寄付によるもので、スラム街では盗まれないよう鍵をかけて学校に保管するしかない。クラリネットなどは肺活量が重要なのに、ゴミの煙がひどいため咳こむこともよくある。
そしてついにプロの登竜門となるオーディションに参加する日、バスに乗った子供たちははじめてスラム街の外を見る。緑にあふれ、空気はすんでいる。ドキュメンタリが注目した少年ふたりは落選したが、まだ終わりではない。
それにしてもオーディションで印象的だったのは都市には高層ビルも複数あり、オーディションをおこなう建物もモダンでよく清掃されていること。全体が貧しい国家ではなく、経済的にも文化的にも成長する国家のなかでとりのこされた子供たちのドキュメンタリなのだと実感できた。