法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』世界はおマヌケさんだらけ! 全員逮捕SP

2時間SP。ミニ映像コーナーは監視カメラに映ったマヌケな犯罪者を、本編は警察権力を賞揚するドキュメンタリを多く紹介。


いつものボーダーセキュリティーは米国の税関。基準値の400倍の放射線が検出された男に、すわ核兵器かと緊張したら、放射線治療の直後というオチだったり、肩すかしが多め。
しかしメキシコから来た青年が、デトロイトでも治安の悪い地区へ就労ではなくボランティアに行くという説明が、それ自体は事実だったが、インターネットで廃墟をかたづけるボランティアを集める活動自体の怪しさから入国拒否されたのは、もっと深堀りしてほしかった。過剰な体感不安の問題かもしれないし、より大きな犯罪につながる端緒かもしれないのに。


アフリカからは、ライオンが人間を襲う事態がひんぱつしている問題を追う。しかしアフリカといっても広い大陸で、どの地域のことかくわしい解説が必要では。
しかし森林伐採で追われた草食動物を追って肉食動物も人間の生活圏に来たというところまでは予想通りだとして、先進国からのサファリツアーやライオン狩りも一因という逸話には驚いた。わざわざ狩りの標的にするためライオンを子供時代から親からひきはなして育てている施設まで登場。せめて完全人工繁殖ならばまだしも、どう考えても何らかの条約に引っかかっていそうにしか思えないのだが……


近年のインドでは、カシミール地方で長期間にわたってインターネットが遮断。他の地方もふくめて政府がおこなった理由と、その被害が描かれる。
これは今回のテーマのアクセントとなる、公権力の暴走を紹介する内容。以前からインドが、反中国や反イスラムとして西側諸国に期待されつつ、階級社会色を強めて政権が独裁的である問題はさすがに報道などで知っていた。しかしインターネットを反暴動の名目でひんぱんに遮断していることは知らなかった。
www.huffingtonpost.jp
インフラとしてのインターネットが使用できず、教育や医療の機会が損なわれ、デジタル大国でありながらインフルエンサーは活動中止に追いこまれる。報道には少数の回線が短時間提供されるだけ。説明はされなかったが監視もされていそうだ。
見ながらミャンマーのインターネット遮断をめぐる問題も思い出したが、より日常的でいて、それなのに……もしくはそれゆえに見すごしてしまっていた。
hokke-ookami.hatenablog.com
ドキュメンタリ内でインド政府側の説明として、フェイク映像による暴動で死者まで出したので遮断しているとされ、スタジオもそれを信じて難しい問題のようにとらえていた。しかし、あえて言えばそのくらいの悪用の恐れだけでインフラを止める行政の判断が正しいとはとうてい思えない。たとえば道路の速度制限をきびしくすれば事故は減るだろうが、回線を遅くするだけでは虚偽の流布は止められないだろう。


米国ユタ州からは、1991年に病院で発生した銃撃立てこもり事件を紹介。看護師が殺され、陣痛の起きている妊婦や赤子が人質にとられ、ひとりの犯人の目前で出産をおこなうしかなくなった。
犯人の動機として、その病院の医者に妻が勝手なことを吹きこまれて中絶したから、その復讐だと主張された。ドキュメンタリやスタジオではくわしく説明されなかったが、プロライフ*1思想によるものだろう。
そのような犯人であるため、妊婦や赤子に対しては人質にしつつもいたわる態度をとったのが救いではある。また、撃たれた看護師の命をつなぎとめられなかった医師が、後に刑務所で自殺をこころみた犯人の命を救った皮肉*2も印象的だった。

*1:中絶の選択権を否定するという意味で、アンチチョイスと呼ぶべきな気もする。

*2:もちろん医療倫理においては、医師は対象がだれであれ全力で治療につくすという原則があり、その対象には犯罪者もふくまれるが。