法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第18話 悪役

裏カジノを経営していたイベント会社の社長が殺された。脇役ばかりの若手コワモテ俳優が、現場にあつまった群衆の影で捜査の様子を見ていた。その殺人現場に落ちていたDVDは、そのコワモテ俳優が主演した自主制作映画で、ごく一部にしか配られていないようだが……


高校演劇部で評価されながら映画界ではくすぶっている若手俳優を中心に、さまざまな場所でさまざまな人間が演じるドラマが展開される。脚本の光益義幸は今期第4話は好印象だった。
hokke-ookami.hatenablog.com
けっこう劇中の小道具に雰囲気があり、特に冒頭の1カットアクションがセットいっぱいによく動いていて、普段より見ごたえがあった。
そうした劇中劇が劇中現実と区別できないリアリティで進行することが、クライマックスで数回ある小さなどんでん返しを支えている。それが物語の中心にいる俳優の、一世一代の名演技というドラマにもなっている。


ただ残念ながら、1時間枠にしては登場人物が多すぎて思惑が入り乱れて、そこで説明不足にならないよう整理した結果として、真相もわかりやすくなってしまった。
いりくんだ状況が少しずつ解明されていくパズルのような良さはあったものの、無駄がなさすぎて引っかけが足りず、ある人物がDVDパッケージを見て気づいた描写が何を意味しているのか予想しやすい。もっと尺が長ければ、気づいたのは目立たないところにあるものだったという展開にもできただろう。
隠された殺人事件もあったという方向へ解明されていくところも、行方不明という情報から杉下がすぐに気づいていく。いっそのこと、隠された殺人事件の情報は前倒しで視聴者に見せて、視聴者にとっても「呪いのビデオ」の恐怖をもりあげても良かったかもしれない……これはこれで「呪いのビデオ」の意味がわかりやすくなってしまうが、現行のストーリーでも「呪いのビデオ」を長く描写できるだけの尺の余裕がなかった。
つめこみすぎて真相が逆にわかりやすくなったのは、もしかしたら新人脚本家ゆえの時間配分ミスなのだろうか。だとすれば、無駄に複雑にして理解困難にしてしまうよりは良いともいえるが。