法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第14話 まばたきの叫び

亀山美和子が取材先の富豪宅でおそわれた。富豪の介護をしていたヘルパーが殺された事件に対して、特命係は周辺で連続している強盗事件とは異なると考える。そこに住む富豪は十五年前に通り魔殺人を起こし、半年前の出所前後に脳卒中で寝たきりになっていた。取材はその富豪と獄中婚した女性に対するものだったが……


川﨑龍太脚本。十年以上前の犯罪の因縁が不可思議な状況を発生させるプロットはシリーズ初参加のSeason20第9話*1を思わせる。
寝たきりでまぶたを動かすしかできない殺人犯をめぐる、異様な事件として見ごたえがあった。現在の事件はどのようにして生まれたのか、シンプルな真相なので見当をつけることはできたが、あまりに残酷でむなしい物語として完成されている。
復讐心を維持しつづけることの難しさや、死刑になるため他人を殺すという動機など、ひとつひとつはノンフィクションやドキュメンタリでも見るようなリアルな要素で構成されながら、それが恐るべき犯人像を成立させる構成にうなった。


ある意味で復讐のむなしさを描いたドラマであり、通り魔殺人をおこなった動機から死刑制度の無力さを感じさせるドラマでもある。他人を殺すことはどのような動機でも無意味だという一貫性が、人を殺して解決する問題などないという結末の杉下の台詞に説得力をもたせていた。
また、さまざまな人間関係が背後に隠されているが、ただの偶然の通り魔殺人を発端として、あくまで他の犯罪の便乗であったり、真意を隠した接近であったり、他人に誘導された結果だったりして、物語の都合による偶然がないことに感心した。イレギュラーなのは美和子の取材くらいで、それも物語の導入で最初からイレギュラーな出来事として位置づけられているので、問題とは感じない。