法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season20』第9話 生まれ変わった男

二十年前に発生した未解決の殺人事件について、青年が遺族のもとへ名乗り出る。その青年は殺人事件と同日に誕生し、殺された立場の記憶があるという。遺族である妻は青年を遠ざけるが、興味をもった特命係がたずねると、たしかに犯人と被害者しか知らないはずの情報を記憶していた……


たしかシリーズ初参加の川﨑龍太による脚本。超常現象を合理的に解明する奇想ミステリとして楽しめた。
生まれ変わりの真相そのものは、中盤で予想はできた。ありえない記憶をもっているのは実際に目撃したパターンかと考えて、しかし死亡と同時に誕生した生まれ変わりでは目撃できないはずというところから、すぐれた運動選手がスランプにおちいっているという情報と組みあわせて、両親の怪しい態度も傍証となり、何が起きていたのか見当がついた。
しかしただ超常を現実的に説明するだけでなく、生まれ変わりに通じるアイデンティティクライシスを違った角度から照らし、一貫したテーマの味わい深さを出していた。
また、発端の殺人事件も、思わず刺した展開がくりかえされた*1ところは脚本の都合を感じざるをえなかったが、それなりの伏線から真相が合理的に明らかになったので、人工的なパズラーとしての満足感はあった。生まれ変わりの真相を特定する物証が殺人事件の物証としても機能して、多重性が意外性をもたらして無駄がない。

*1:青年が善良で、少なくとも主観的には嘘をついていないと明らかにする手続きとして必要な展開だとは思うが。