法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第1話 検察捜査

何度も結婚しては妻を殺害した富豪が、自白後に警察を告訴する。取調べで脅迫を受けたというのだ。名指しされた杉下と冠城は身におぼえがない。
しかし特命係をつぶす思惑をもった検察が告訴を受理することとなり、その手先として検察官の田臥が特命係に接触してくる……


橋本一監督、輿水泰弘脚本というメインスタッフによる初回SPで、1時間半枠。しかし物語は終わらず次回につづく。おそらく2時間半枠を想定した物語を、放送の都合で2回にわけたのだろうな、と見当がついてしまう。
このドラマには、放映時間が長くなっても物語内容が通常放映と変わらないため、画面だけ派手で密度が薄くなるという傾向がある。前編だけで物語が終わらなかったことで、いっそう内容が薄く感じられた。


まず事件の謎解きが終わった時点から導入し*1田臥の視点から特命係の立場や手法や人間関係を説明していく展開は、今シーズンが初見の視聴者への説明にはいいだろう。
しかし旧シーズンから視聴してきた者としては、捜査時の脅迫を特命係が否認するという物語の基盤が納得しがたい。過去回をふりかえれば、違法な捜査に手をそめることはもちろん、威圧を用いて自白させることは何度もあったはずだ。その暴走する正義ぶりこそがドラマの味わいだといっていい。
今回の事件に限っては、取調べ自体に関与していないという説明がされているのだから、少なくとも今回は違うという説明で押し通すべきだった。


また、劇中の現時点では捜査が終了している連続殺人事件も、新味がなくて娯楽としてつまらない。
異常な性格の富豪が事故に見せかけて殺したというだけで、あまりにフィクションでありふれている設定だ。犯人と気づく手がかりも、豪邸の庭に不似合いな焼却炉を置いていて、不要物を燃やす性格だという心理的なそれだけ。
取調べの全面可視化をテーマにもりこんでいたり、それによる違法捜査をレギュラーメンバーが担当していることで先行きが見えなかったりと、興味深いところもいくつかあるのだが。

*1:見はじめた当初は以前のシーズンの続編かと錯覚したくらい。