法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第6話 笑う死体

ホームレスが盗んでいた財布から、河川敷で死んでいた男の身元が判明する。かつて夫婦漫才で売れた男だったが数年で引退し、十数年後の現在までに怪しげな販売員に身を落としていた……


どうしようもなく落ちていった男たちのどうしようもない人間模様として、味わい深さのあるドラマではあった。
窃盗をおこなうホームレスから殺人事件の謎解きがはじまる導入に、現代社会では弱者への偏見をあおりかねない設定と思ったが、出てくる商売が良くも悪くもヤクザなものばかりなので、全体をとおして見ると逆にバランスがとれている。
笑顔で死んだ男が最期に何を感じたのか、まず杉下が自ら再現した場面で映り、次に男が息子と会った場面でも映っているので、バカバカしいオチながらミステリとしてはOK。犯人しか知りえない情報を口走ることが手がかりになる古臭いパターンと思わせて、逆に知っているはずの情報に言及しないことが傍証になるという杉下の推理のひとひねりも良かった。
しかし杉下が犯人と被害者の関係に気づいた手がかりは、何かの手がかりを杉下がいつ目撃したのかという問いと考えれば伏線があったといえなくもないが、やはり画面にまったく映っていないのであれば*1アンフェアと思わざるをえない。ドラマを最初から見返せば、真犯人が登場するファーストカットにその手がかりを映す機会はあったし、そこで見せた手がかりなら視聴者の印象に残しつつも確定的な記憶にはなるまいに。

*1:録画を見返したが見つけられなかった。