法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

東京都若年被害女性等支援事業は最初から4団体に委託しているのだから、もし制度に不正があるならば1団体の問題ではない

インターネットに流れる一部情報を根拠に遠回りしながら、最終的に結論の一部に妥当な視点をふくんだnote記事を見かけた。書いたのは「opp@oppekepe7」氏。
colaboの不正疑惑に関する考察|opp|note

不正疑惑は、委託契約について地方自治法で定める適切な検査ができるように経費の信憑性を確保する措置を一切講じなかった東京都にそもそもの原因があると考える。

しかし支援団体Colaboの不正疑惑という枠組みから考えを進めているためか、はてなブックマークを見ると1団体の特異な疑惑であるかのような理解が少なくない。
[B! 行政] colaboの不正疑惑に関する考察|opp|note

id:nona_aik 運用の建付けで言えばそういう結論(東京都に原因がある)ってことになるのかもしれないけど、素人目線だとどうしても「でも、そもそも騙そうとしたほうが悪いのでは?」と思っちゃうな。もしわざとやってるなら。

id:Outfielder 「colaboの集計が水増しや架空でないことが一切確認できない」「経費の信憑性を確保する措置を一切講じなかった東京都」東京都はなぜcolabo案件だけこういう扱いにしてしまったのか。政治家の関与でもあったのだろうか

id:BIFF 現段階の疑問を過不足なくまとめてくれて助かる。納税者から見たColaboの問題点は、こうした特異な委託契約がどういう経緯で決まったのかと、このザルのような管理で税金を支出し続けて良いのかに集約されると思う。。

note記事も「「colabo事業委託」の特殊性」という章を立て、複数団体に委託されている情報が書かれていない。はてなブックマークで指摘するコメントは初期にひとつだけで、無視されている*1

id:asumi2021 ようやく補助金と委託金の違いが認知されてきた/「「colabo事業委託」の特殊性」 他の団体も委託契約しているんだが…/適正化されて夜間アウトリーチ活動を成果とすると、逆に経費は見えなくなるのでは?

東京都の公式ページにあるように、委託先として4団体が明記されている。これは事業がはじまった時から変わらない。
東京都若年被害女性等支援事業 東京都福祉保健局

東京都では、下記の民間団体に事業の一部を委託し、東京都若年被害女性等支援事業を実施しています。

・一般社団法人 Colabo
特定非営利活動法人 BONDプロジェクト
特定非営利活動法人 ぱっぷす
・一般社団法人 若草プロジェクト

ちなみに「モデル事業」とも呼ばれるように、この事業はもともと厚労省が主導して*2、東京都だけが参加したのでモデルケースとなった。
国会会議録検索システム

厚労省としては、来年度予算案において婦人相談所等の公的機関と民間支援団体とが連携した支援体制を構築していくと、こういう観点に立って、地方自治体に対する補助事業として若年被害女性等支援モデル事業の創設を盛り込んでおります。
 具体的には、民間支援団体による夜間の夜回り、声掛けなどのいわゆるアウトリーチ支援、居場所の確保、相談支援の実施に対してこれは助成を行う、それから民間支援団体、地方自治体、ハローワークなどの関係機関が連携して支援するための会議を設置する、こういったことを想定をし、具体的なモデルになるような体制をまず構築をし、それを全国展開を図っていきたいと、こういうように思っております。

共産党の権力でColaboが東京都の税金を支出させているかのような主張は、現時点では陰謀論というしかない。


また、この事業がおこなうのは街を巡回しての声かけなどだ。つまりは不特定多数への支援であり、活動の回数や経費に比例した成果は約束できない。
それでもColaboを税金で活動している団体として解釈すると、水増し請求どころか数倍以上の無理をしていることになる。まさか東京都が出せる経費をつかいきれば活動を止めるべきと主張する人はいるまい。
はてなブックマークで「追加請求」の可能性に言及するコメントがあったが、そのような税金の追加支出をさせない制約をもうければ、計画と実際の経費に差額が生まれるのは当然だ*3

id:natu3kan 高額な品の経費通すのに、買いましたって報告だけでお金降りるのは普通の会社でもなかなかないもんな。しかも買ってみないと正確な価格が不明なら、後から実際にかかった費用を見せて、追加請求や返金するだろうし。

もし逆に、Colaboが実際の経費を計上すれば東京都が追加でしはらうようになれば、「opp@oppekepe7」氏らは「不正」がなくなったと喜ぶのだろうか。それならば税金が数倍以上に支出されることになって、Colaboにとっても良いことなのかもしれない。
それは先述した成果を約束できないことの逆転で、支援の実態がなくても経費を請求できる事業になりかねないが、形式的には「opp@oppekepe7」氏が主張する「不正」ではないことになる。
つまるところ行政がやるべきことを民間にやらせて一部の補助ですませ、公金を福祉につかいたがらない社会のありかたに根本の原因があるのだろう。この事業だけの問題ではない。

*1:はてなスターはひとつだけ。ただし他にもnote記事の理屈を批判するコメントはある。

*2:引用した発言は厚労相をつとめた自民党加藤勝信氏。

*3:差額が生まれる原因が他にある可能性を否定するわけではない。