遠隔殺人のための脅迫を苦にして、標的の英雄は自死を選んだ。事件当初に当局へ連絡しなかった杉下は責任を問われ、謹慎を命じられるが、さまざまな口実をつかって調査をはじめる。
やがて殺人を命じられたサルウィンの男が死亡。事故か殺人か不明なまま捜査をつづけると、姉の部屋に何かを差しこんでいたり、サルウィンに親身な外交官と酒席をもうけていたことがわかる……
前回*1につづいて橋本一監督、輿水泰弘脚本。長期シリーズの展開リセットによくあるパターンの、登場人物の達成が台無しにされる展開となっていく。後味の悪さはこのドラマシリーズでも上位に入る。
しかし、亀山夫妻の教育支援が象徴するような先進国が発展途上国を導くだけの一方的な関係を、事件の背景でひっくりかえす展開だったともいえる。アジアの新興国で日本人らが性的搾取をおこなうことは近年までつづいているし、そうして貧しい途上国を先進国が利用してきた歴史がある。
また、その搾取という現在では批判の対象になることを、あえて途上国側がかけひきにつかうことも、偏見に満ちた描写というより、そこまでして利益をえようとする主体性が感じられた。死者の復讐を超法規的におこなっただろう結末もふくめて、貧困国らしい腐敗という解釈をするべきではないだろう。
あと、国内では無理をとおそうとしても謹慎の身のため限界がある杉下が、国境をこえた事件ということを逆用して、サルウィンで好き放題に捜査をはじめる逆転はバカバカしくて笑った。サルウィン現地の描写も、日本の一般的なドラマとしてはそれなりに成立している。
ただし手がかりや証拠を解決編で後出しするところは、このドラマらしい悪癖だった。英雄の死の直後に「祝杯」をあげたことなど、描写の意味が二転三転するところはミステリらしい味わいがあったが、もう少し細部を厳密にすれば、もっと意外性と納得感が両立できるだろうに。