「まるでホンモノ!?自然観察プラモシリーズ」は、スネ夫にガレージキットを自慢されたのび太が、対抗してもっとすごいモデルを作ろうとする。そこでドラえもんが出したのはシンプルすぎる植物のプラモで……
2006年にアニメ化された末期原作を、水野宗徳シリーズ構成の脚本に善聡一郎元監督のコンテ、丸山宏一キャラクターデザインの作画監督と充実したスタッフで映像化。最後に崩壊する家の破片作画が地味にいい。
原作者の生前に出た単行本の最終巻に収録されたくらい新しい原作なので、ガレージキットのような当時のホビーの流行をおさえている。今回のアニメ化ではYoutuberのようにスネ夫がプレゼンするアレンジで、原作どおりに同時代的な流行を感じさせるところがおもしろい。
ただ、こうなると秘密道具の簡単なプラモも原作のように接着剤をつかうのではなく、完全に定着したスナップフィット方式にアレンジしてほしかったところ。代表的なガンプラでスナップフィットが大々的に採用されたのは1987年からで、1991年が初出の原作より少し早いようだ。
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1987年12月に発売された『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』シリーズから、接着剤を使わなくても簡単に組み立てられる「スナップフィット」が導入された。
「のぞき穴ボード」は、ブロック塀の穴に飲み終わったペットボトルを押しこんでいる犯人をつきとめるため、タイムマシンで深夜に行く。しかし寒くなったため、秘密道具で屋内から監視することに……
2005年リニューアル以降で初アニメ化。腰繁男コンテは主観視点を多用して、穴の側面を地味にデジタル技術で立体的に見せている。
犯行現場を監視する、特に時間を超えてとなるとタイムテレビでも良いが、まずペットボトルを捨てている犯人*1をとっちめようと時間移動して、そこからリアルタイムで監視しはじめる展開でのぞき穴ボードが出ても不自然ではなくしている。
そこから原作どおりに穴をとおしてイタズラする展開に発展するわけだが、その直前に宇宙基地から月を観察するアニメオリジナル描写を入れたことに首をかしげる。先述の機能からすると真空の宇宙へ空気が吸いこまれないと不自然だし、秘密道具の安全機能がはたらいていると考えるとオチの危険と矛盾を感じる。
一方、原作ではただ他人を観察するだけのパートをのび太の問題行動にアレンジしていって、オチに納得感を出すアレンジは良かった。特にドラえもんが違う恋猫に同じ台詞でプレゼントを贈っているかに思わせて、三つ子だったという真相は意外でいて猫の繁殖力からすると納得感がある。原作ではすぐ指摘されるのぞき穴をさがす描写を入れてサスペンスを高めたアレンジも良い。
「重さすいこみじゅう」が今回のドラドラMiniシアター。原作からアレンジしようのない短いショートアニメだが、新人アニメーター神戸佑太がコンテ演出一人原画まで担当したことで映像は楽しい。