法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』奇跡の生還SP

米国からは、あえて観光客のいない冬に大渓谷グランドキャニオンで渓流下りしようとした男の紹介。大きなゴムボートに食糧やキャンプ道具などを充分にのせて、急流をくだっていく。
480kmのコロラド川を3日間でくだる計画だった。しかし3日目、最大の難関ラバ・フォールズ・ラピッドをうまく越えて油断してしまい、忘れていた次の難所でコントロールがまにあわず、岩にのりあげて直そうとしたところを転覆。水温4度の急流に投げ出される。
いったん岩場にのぼったが、転覆したボートは900kgもあり、人力ではもどせない。急流のなかに入って逆さまのボートのから1時間かけて滑車とロープを見つけ、岩場に固定してひっくりかえそうとしたものの、水を吸った荷物は重く動かず、岩場に固定した滑車が外れて落ちていった。
今度は対岸の浅瀬にいこうと転覆したままのボートに乗ってイカダのようにラフティングしようとしたが、安定するわけもなく岩場に激突しそうになって水中に飛びこむ。
そこからは素足で必死に崖をのぼることになり、2時間かけて頂上につきそうなところで川に落下するなどの失敗もあったが、かろうじて谷の上に出ることはできた。旅の終わりに近く、なんとか道具がない人力でも登れる崖の高さだったのが不幸中の幸いだったのだろう。
荒野のなかで穴をほって枯れ草をしき、かろうじて持っていたライターとナイフで火をつけ、焼石を枯れ草の下に入れるなどの工夫をして、凍えながらも氷点下の夜を生きのびた。食べ物といえば、崖の上でひろった開封してないビール缶や10cmのトカゲくらいしか口にすることができず、飢えていたのにひどくまずかったという。
そして7日目、いきなりあらわれたヘリコプターに助けられた。独り身だったので旅から帰らないことを心配する者もおらず、途中に遭遇した小型飛行機もとおりすぎただけだが、無人のボートが下流に流れついたことで捜索がはじまっていたという。
全体的に失敗続きだし、目を見張る工夫などもないので単調だったが、情景は興味深くサバイバル番組としては充実していた。


番組表などで重視されているのが「映画化タリバンから米兵を命がけ救ったアフガン村人」。ドキュメンタリ内でも紹介されたように、『ローン・サバイバー』で米兵の命を助けた村人の視点で後日談まで描く。
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しかし映画鑑賞後しばらくして知った『ローン・サバイバー』の救助側の証言との相違は簡単に言及されただけ*1。それもふくめて、基本的には米兵を救う選択をおこなった男と家族の主体性と苦難を描くドキュメンタリだった。
タリバンの圧力があるなかで村人からの反発や、村長が男の決断につくことで村が一体となって米兵を守り、救助にきた米軍のヘリ部隊に返す。映画はそこのヘリコプター部隊による華々しい攻撃を見せ場にして終わるが、現実は救った後の日常でタリバンから逃れる男と家族の物語がつづいていた。
この番組らしくダイジェスト感が強いこともあり、米国の思惑やタリバンと部族社会の緊張やアフガニスタンの社会構造などの視点は深めない。あくまで信念と掟に殉じた個人の気高さをたたえるつくり。美しい物語にしたてた米国との決別などは風刺的だったが、既知の情報にとどまっていた。悪くはなかったのだが。

*1:タリバン兵士は映画よりずっと少人数だったことは言及もされなかった。