法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』地球ってまだまだ謎だらけ!大自然はミステリーSP

2時間SP。


バングラデシュのブラマプト川では、悪路を三人組が巨大トラック三台で進む運搬業者などを紹介。この種のドキュメンタリでよく見る風景ではあるが、トラックそのものは順調に動いて、道路というインフラの未整備ぶりが現在のインド周辺国らしい。
破格の収入を目的として、崩れかけた崖路を左右ともギリギリで進むトラックが危なっかしい。スタジオで、もっと小さなトラックで6台に分けて進めばいいのにと指摘していたのも納得の光景だが、そもそも運転技術をもつ人が少ないのかもしれない。
他に川を進む船に牛を満載して、市場に売りに行く人々。牛が片側に集まると転覆の危険がある。市場で売れなければ時間と金をかけて牛とともに帰る必要があり、足元を見られたような値段で買われていく。
他にイスラム教の祭りのため、人々が船に満載される。船は競って先をいき、遅い船にわざと追突したりもする。いかにも乱暴な光景だが、船自体は川を進むにしては巨大で、三階建てのけっこう豪華に見えるフェリーなところが印象的。


オーストラリアから世界各地の珍しい儀式を取材。今回はロシア最北の少数民族ネネツと生活をおくり、成人の儀式にたちあう。ツンドラにとりのこされて五日間を生き抜いたという伝説の男に出会い、トナカイを投げ縄でつかまえる技術を学ぶ。
トナカイ肉などを食べさせてもらったお礼として、調味料ベジマイトをつけてあげるが、気に入られなかった。クセが強い調味料という情報はインターネットの食品レビューでよく見ていたが、こういう番組で相手に賞賛されない流れは珍しい。
トナカイを一頭殺すことで成人の証になる儀式は、未見だが映画『ブタがいた教室』を思い出す。映画への批判や、文化としての屠殺ということを考えながら、私の頭では答えが出なかった。


フランス南部の深海では、ジャン・クストーが半世紀以上前に発見した豊かな自然があった。その調査のため男三人が一カ月におよぶ密閉環境での生活をおくる。
潜水病をふせぐため高圧力の潜水艇で調査をおこない、艇外に出入りしての調査も圧力の変化を気にしなくてすむ。かわりに調査終了ごとに船上へひきあげられ、潜水艇と連結した圧力室で生活する。食料は小さな二重扉ごしに船からわたしてもらえる。番組では紹介されなかったが、洗濯物や日用品も船側にわたして処理してもらうのだろう。
なかなかのアイデアかと思いきや、圧力室もけっこうせまくて潜水艇と大差ない三畳ほどの広さ。休憩中は映像作品や読書を楽しんでいるかと思いきや、退屈をもてあましている姿が映し出される。調査隊のひとりの妻は船上ですぐ近くにいるのに、危険な調査に不安になって泣きさけんだりもする。もう少し工夫できなかったのか。
それはそれとして、深海の豊かな生物群は美しく、さまざまな珍しい映像も興味深い。ただ自然を賞揚するだけではなく、市街地から海中までのびた巨大排水管の出口を調査して、濁りきった水中でわずかな生物が存在している光景を映したりも。東京オリンピックごろに屎尿東京湾沖合へ船で運んで廃棄していたNHKドキュメンタリを思い出したが*1、たぶん今の日本でも隠蔽されているだけで同じような問題はつづいているのだろう。


最初に認定された世界自然遺産のひとつイエローストーン国立公園では、二十年間でアカシカが急減した謎を解く。
つかまえたアカシカにストレスなどの問題はなく、天敵と思われた狼はエサをあたえられていたためアカシカを襲わない。しかし調査を続けると子鹿の段階で減っていることが判明した。
やがてヒグマが小鹿を殺していることに注目。なぜ習性の変化が起きたのか、食性の変化からさぐっていった末に、湖からニジマスも激減していたことが判明する。
おそらくは釣りを楽しむために放流された巨大魚レイクトラウトがニジマスを食べてしまい、食料を失ったヒグマがかわりにアカシカの子供を食べるようになっていたわけだ。現在はレイクトラウトを駆除して生態系が回復しつつあるという。
あたかもバタフライ効果のような食物連鎖による影響の大きさに驚かされるし、かつてスポーツフィッシングがもっていた悪質さも痛感される。もちろん日本も他人事ではないし*2、釣りに限った話でもない。


そんな釣り人だが、メキシコの海でガイドひとりの助けを借りて、幼馴染の二人組で海釣りを楽しもうとしていたところ、漂流してしまう。
クルーザーから小さなボートで出て釣りをしていたところ、クルーザーが流されて見失う。ボートが燃料切れになるよりはと小さな無人島に向かうが、上陸に適した場所が見つからず、無理やり岩場に突進してボートを壊してしまう。
次の日、動力の壊れたボートを手漕ぎして陸地へ向かおうとするが、漁船に遭遇しても気づいてもらえず、潮に流されてもとの無人島にもどってしまう。無人島は岩ばかりで飲み水もなく、漂着したペットボトル内の液体で無理やり渇きをいやす。
やがて三人組は無人島の周囲をめぐって生存しようとするが、海に飛びこんで移動した時に幼馴染が足をケガして、イカダに乗せて運ぶはめに。しかもそうして運んでいたら、力つきて眠ってしまい、気づくと幼馴染はうつぶせで海に浮かんでいて死んでしまった……
マヌケな雰囲気で描かれていたサバイバル劇で、突然の死者が発生した展開に驚いてしまった。たしかにリアルなサバイバルでマヌケなことは生死に直結するが、あまりにも唐突かつ必然性のない死に唖然としてしまう。他は何ひとつ状況が変化しない単調なサバイバル劇なだけに、違和感が強烈だった。
その後もマヌケな行動はつづき、残されたふたりは陸地を歩くほうが楽なはずなのに、なぜかイカダを浮かべて海岸を進む。たまたま近くをとおりがかかった釣り船に助けてもらったが、スタジオで指摘されるようにリアルなサバイバルというものの娯楽としてのつまらなさを感じる内容だった。
食料が豊かな島に知識と技術のある集団が流れついたサバイバル実録が最近たまたま話題となっていて、楽しく読んだばかりなので、そのコントラストも印象的だ。
www.aozora.gr.jp


最後は不老不死的なさまざまな動物を紹介して、人間の医療に役立てる可能性を語るドキュメンタリ。
プラナリアクマムシ、ベニクラゲにハダカデバネズミといった奇妙さが有名な動物ばかり紹介されて、特にサプライズというものはなかた。しかし知識をもっている習性や実験を次々に実際に映像で見られたので、それなり以上に楽しくはあった。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:レイクトラウトについても、半世紀以上前に中禅寺湖に放流されて定着してしまったという。しかも福島原発事故のため、現在では釣っても食用にできず、放流するしかないとか。