法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』戦慄の瞬間2時間SP

ミニ映像集はさまざまな事故を偶然とらえたもの。よく中国と爆発をむすびつける「ネタ」が日本のインターネットでは好まれているが、番組では中国はもちろんさまざまな国の爆発も紹介する。事件事故を偶然に記録して、さまざまなメディアが報じる時代において、ただ目につくというだけで特異な頻度を見いだすべきではないのだろう*1


海の動物たちに人間がおそわれるエピソード集は、ヨットにぶつかってくるクジラや頭をくわえてくるゾウアザラシなど、動物側が遊びのつもりで人間が命の危機に直面する出来事が印象的。


1997年、ロシアの宇宙ステーションミールで米国の宇宙飛行士が直面した火災事故を紹介。冷戦直後の融和を目指した共同計画で2年間の訓練をロシアでおこない、ミールに行ったが、そこは訓練施設とはかけはなれたゴミゴミした空間だった……
米国視点だけでなく、ロシア飛行士も実名で証言する。しかし番組の編集が悪いのか、事故の発端となる酸素供給でなぜ火災が発生したのかがよくわからない。故障による火花でも散ったのかと思って検索したところ、もともと熱で酸素を発生させていたことをJAXAの古いページで知った。
ミール宇宙ステーション事故履歴

 ミール船内で、酸素供給システムのバックアップ装置である酸素発生キャンドル(熱することで化学的に酸素を発生させる缶)が火元となる火災が発生しました。

充満した煙のなかで壊れていない酸素マスクを見つけようとしたり、脱出の準備をととのえたりとサスペンスフルなドキュメンタリだったが、描く要素が少なくて映画化は難しいかな。
他に2001年、国際宇宙ステーションISSで起きた視力喪失事故を紹介。船外作業中に謎の眼の痛みをおぼえて視界が失われたという想像するも恐ろしい事故だったが、地上の助言で空気をヘルメット外に放出して不純物の排出に成功、視力をとりもどした。原因はヘルメットの曇り止めが剥離して目に入ったためだった。


米国の新人警官の実地研修を追うドキュメンタリーは、のんきな黒人男性とピュアな白人女性が、それぞれ別の現場で奮闘する。若い恋人たちのポエムを書くことが趣味な、年長の黒人男性に不思議なキュートさがある。
銃撃戦の危険などがある局面で、POV映像ならではの迫真性が生まれるかと思いきや、全体的に空気が弛緩している。役割語を強調した吹替の問題だろうか。もちろん新人が本当に危険なところからは距離をとっているためもあるだろうが。


英国からは2007年、MSCナポリ号の海運事故を紹介。検索すると日本でも専門誌の論考らしき記事が引っかかるし、世界的にも重要な事故だったらしい。
事故からしばらくたって状況に気づく新人の視点で導入したりと、ディザスター映画のような構成のようでいて、救命ボートはきちんと機能したし救助もすぐに来たしで、あまり災害サスペンスは感じない。
どちらかといえば船体が損傷したMSCナポリ号からの重油流出をどのように防ぐか、事故の原因は何だったか、といった事後処理に重きをおくドキュメンタリだった。自然保護区である浅瀬にあえて動かして座礁させて完全な沈没をふせいで、重油を完全にぬきとることに成功したり。過積載な上に配置のバランスが悪かった他、エンジンルームが船体の中央近くにあって船の骨組みがそこをよけていたり。スタジオが指摘するように、事故が発生した後の処理はほぼ完璧という印象が残った不思議なドキュメンタリだった。


最後はザンビアザンベジ川で旅行していた中年男アーサーとアリステア、そしてアーサーの妻とその父母の恐怖体験を紹介。
釣りをしたり楽しんでいたところを、なわばりを守ろうとしたカバがボートを攻撃して転覆。ひっくりかえったボートでアリステアとアーサー妻の父、川の中央でひざまで水につかるような浅瀬でアーサーと妻と妻の母が、それぞれ孤立する。
ワニのいる危険な川をアリステアが泳いで、背後のワニに反撃しながら岸までたどりつくも、血まみれの状態で動けなくなる。一方でアーサーたちは浅瀬に集まれたものの、ワニがいつ来るかを恐れて気を休めることができずに寒い夜をすごす。
しかしアリステアはなぜか横でバッファローが休んだおかげで肉食獣におそわれずにすみ、サスライアリが傷口にたかった激痛で逆に覚醒。助けを求めて移動しつづけ、対岸で男女がキャンプをしている場所までたどりつく。大声を出せずに失神したアリステアだが、数時間後に帰りぎわの男女が発見して救出、アーサーたちも助かった。
サメ映画やワニ映画の真面目なパターンを見ているような面白さがあって、自然サバイバルドキュメンタリとしては上々。ちなみに検索すると、サッカー選手が死亡する事故が起きるくらいにはワニが危険な川らしい。
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*1:そもそも「破裂」くらいのニュアンスでも中国では「爆発」という表記をつかうので、実態以上に増えて見えるという理由もあるらしいが。