のび太の誕生日特別企画。今回はひさしぶりに前後とも原作あり。コンテは異なるが氏家友和が両方の演出を担当したためか、カメラ位置が低いカットが目立った印象。
「友情カプセル」は、まずスネ夫がドラえもんをドラ焼きで手なずけようとして失敗。かわりに友情を人工的に作る秘密道具を出してもらい、その標的をこっそりドラえもんにする……
2010年に「ぼく、骨川ドラえもん」というサブタイトルでアニメ化ずみ*1の短編を、高橋敦史コンテでリメイク。脚本は清水東。
のび太が「しかし、機械で友だちをつくるなんて、かわいそうだね」とつぶやく横にドラえもんがいるコマで有名な短編だが、今回のアニメでは「機械」から「道具」へ台詞を改変。おかげでパラドキシカルではなくなったが、しかし原作者の作風からすると、のび太の友情もしょせん作られたもので操作できるものという冷徹な意図をこめた台詞であったように思える。他にも、捨てたカプセルが次にくっつく描写を足して、オチの驚きが減った残念さがある。
ていねいに展開が流れるようアレンジすることは悪くないと思うのだが、やりすぎると引っかかりを悪い意味で失ったり、意外性がなくなってしまうという問題を感じてしまった。
それでいて、カプセルがドラえもんについた直後に、ついたはずの部分を画面に映しながら、そこに何も見えない。キラリと光ったり、小さな点がついていたり、ついたはずの部分をフレーム外に出したり、といった伏線を入れてほしかった。
絵作りは全体として良かったし、基本的には原作に忠実なのだが、アレンジの方向性が納得いかないという困った回だった。
「ジャイ子の恋人=のび太」は、のび太のあとを女子がつけていることからはじまる。それがジャイ子だったことから、兄であるジャイアンがのび太との恋愛を成就させてやろうとして……
2005年のリニューアル初期に映像化した短編を、ひさしぶりにリメイク。複数回にわたって少しずつジャイ子が夢に向かって成長していく展開の、これが始まりである。
正直にいえば、すでに成長後のジャイ子との物語がくりかえし映像化された後に、それ以前の関係性でのび太たちとジャイ子の姿を描かれると、どうしても違和感をもってしまう。
もちろん、2017年にスタッフをリニューアルしたため、またジャイ子の成長を描きなおそうとしているのだと推測はできる。2005年のリニューアルでは、なぜか漫画家をジャイ子が目指すことを前提としたエピソードが先に映像化されて、首をかしげたものだ。しかし、だからこそ十年以上をへて、現代に映像化するからこその更新をどこかで見せてほしかった。
良くも悪くも原作そのままの内容で、ジャイ子が主人公の相手役にふさわしくないことを前提として物語が進んでいく。今回のアニメでもドラえもんが冷徹に論評したように、むしろのび太こそジャイ子にふさわしくないという視点をもっとふくらませても良かった気がする。