法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season20』第18話 詩集を売る女

とある深夜、若い女性同士の刃傷沙汰に冠城がわりこみ、刺されてしまう。少し時間をもどして、事件が発覚した端緒から物語がはじまる。若い女性の一方が踏切で自殺しかねない姿を特命係が見かけ、その女性が街角で売っていた手作りの詩集を杉下が購入すると……


謎を解明する刑事ドラマとしては、まったくピンとこない話だった。時系列を前後させたり、事件の瞬間までカウントダウンするようなテロップを何度も出したりと、語り口は奇をてらっているが、ただ先に見せたクライマックスにつなげるだけで工夫がない。
メインキャラクターがシーズン終了直前で誰かを身をていしてかばっても、致命的な傷を負わないだろうと予測してしまうし、その予断を裏切ることをしてもくれない。それゆえ意外性がないだけでなく緊張感も生まれない。
若い女性同士の関係性も、一方が社会的に成功して一方が社会の底辺にいて、世代が近くて同じ名前をつかっている時点で、社会的な立場をどこかで交換したのだろうと予想できるし、ドラマの中盤でも貧困ビジネスにおける戸籍売買が言及されてしまう。そしてそのまま結末まで何のひねりもなく物語が進んでいく。
貧困ビジネスで戸籍売買を仲介した男は、その情報を特命係や視聴者につたえる役割りを終えると逮捕されて退場。詩に反映された作者の状況が推理の手がかりになるが、予言詩の解釈じみていて説得力があまりない。


ふたりの女性同士の人生が交錯するドラマとして楽しめば良かったのだろうし、そうしたドラマを刑事ドラマの一エピソードとして挿入したこと自体の珍しさは感じないでもなかったが、どこかでトリッキーな展開が来ることを期待していた。
以前から瀧本智行脚本回は真相に見当がつけやすく、ひとひねり足りないと思うことが多かったが、さすがにひねり自体がまったくないことはなかったし、むしろミステリとしての構造そのものは悪くないと感じていた*1

*1:シリーズ初参加回などはミステリとしてのプロットそのものは良くて、配役や演出で重要人物が目立ちすぎたのが問題だと思ったくらいだ。 hokke-ookami.hatenablog.com