法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season19』第6話 三文芝居

電子部品メーカーの派遣社員がマンション玄関で死体となって見つかる。その事件の目撃者として名乗り出たのが、派遣風俗嬢を送迎している男だった。借金をかかえていた派遣社員が、はげしい取り立ての結果として殺されたというのだが……


映画監督の瀧本智行が脚本としてシリーズ初参加。シェイクスピアを好んで引用する元舞台役者で関西弁のデリヘルドライバーを中心に、現代的で奇妙な人間模様が描かれた。
被害者や関係者が「派遣」という不安定かつ流動的な立場で、予想外に接点をもって悲劇へ落ちていく。その裏の顔や、過去を捨てた立場からミステリらしい意外性が生まれる。
金銭の貸し借りで人間関係が連鎖していく構図も良かったし、派遣相互のドライな人間関係と因縁から支えあう人間関係を対照させたことも印象的。
一課のトリオによる闇金の大捕物や、デリヘル車内のカメラを固定した長回しの会話など、ドラマとしては目を引く撮影も多かった。


しかし脇役に容貌が目立つ俳優を配置したことで、途中で真相に見当がついてしまった。もう少し地味で埋没するメイクや演技をさせたほうが驚きが増したろう。もっとも、まったく印象に残らなければ解決編で驚きより困惑を感じかねないので、バランスが難しいところとは思うが。
また、その真相につながるちょっとした伏線は良かったが、そこで映していない手がかりを解決編で回想したこともいただけない。伏線の描写よりずっと前か後に、気づかれないよう手がかりを描写する余裕はあったはずだ。もっとも、手がかり描写が回想で後付けされることはシリーズの悪癖のひとつだが。
何よりの問題として、物語の中心人物に、かつて詐欺に加担して犠牲者を出した悔恨を設定したことが良くない。たった3話前*1と完全にネタかぶりしていて、そのため人間関係から事件全体にまで既視感がつきまとった。たぶん各話スタッフの責任ではなく、プロデューサーあたりが責任もってコントロールすべきところだろう。