法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第10話 黒いコートの女

二課の宝石窃盗グループ逮捕に特命係も参加した。逃げた少人数を追った特命係は、街角の階段下に人だかりを見かける。そして出会ったのが黒いコートの女。その謎の女は「ダイヤ」を探しているらしいが……


瀧本智行脚本、橋本一監督。日本の民放刑事ドラマとしては悪くない捕物アクション*1から、謎の女をめぐるドラマが展開される。
宝石窃盗グループそのものをミスディレクションとして、物語はそのグループの一員ながら独立して行動して死んだ若い男とあた、謎の女の数年間にわたる因縁を描いていく。女が口にする「ダイヤ」が何かという問題のシンプルな答えは、シンプルすぎて逆に虚をつかれた。
そして「ダイヤ」が何かがわかり、女が過去に不良の若者を殺したこともわかれば、真相の全体像に見当をつけることは難しくない。その真相を中盤でほぼ視聴者にとって確定させたまま、下手にひねりを入れずに関係者の苦しみの日々を感じさせるドラマをじっくり描いた。


謎の女が最初に画面に登場した時点で等身大の人間として描かれ、凶悪な犯罪者とも理不尽な異常者とも感じさせないため、真相が明かされても意外性はあまりない。
あえて真相がほぼわかる中盤までは顔を映さないくらい謎めかせて、異様な存在感をつくったほうが真相を落差できわだたせることができたかもしれない。
そういう意味ではあまり好みではなく、もっとサスペンス感を高める方向へ工夫してほしかったとは思ったが、人情刑事ドラマとしては今回くらいの雰囲気が良いのだろう。
かつてこのドラマはコメディ回からサイコサスペンス回までバラエティ豊かだったので、どうしても残念な気分は残ったのだが……そういう意味では、あえて古典的な本格ミステリにしているらしい元日スペシャルに期待したい。

*1:とはいえ、すでに世界水準のアクションを他の刑事ドラマで見かけるようになってからは、長期シリーズゆえの進化しづらさも感じている。