法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season20』第13話 死者の結婚

十数年前に幼い一人娘が行方不明になり、ランドセルだけが発見された。その家へ若い女性がかけこんでくる。死者を想像のなかで結婚させてやる冥婚絵を依頼されて描いた元刑事は、その若い女性が家にいる姿を見かけ、自身の描いた冥婚絵そっくりなことに驚く。そして若い男性が殺害されているのが発見された……


川崎龍太脚本。死者の記憶を描いた第9話*1につづいて、死と生のあわいを超常的な現象のように見せる奇想ミステリが展開された。
冥婚絵という風習は知らなかったが、検索してみると興味深い文化だ。想像で人の姿を描く技術という観点から、警察の似顔絵制作にむすびつけた着眼点もいい。

犠牲者が成長した姿を発表することで、連鎖的に事態が動いて過去の事件の真相があばかれていくという構図も悪くない。過去の似顔絵捏造がきちんと糾弾されつつ、今度こそ心底からうちこんで創作した虚構が救いへの足がかりになる。
後半で事件が解決へ向かいながら、それと明らかに矛盾した事実を冒頭から描かれている不穏さも素晴らしい。その矛盾した事実の真相の伏線が特命係の目前でさりげなくも大胆に描写されていたことも良かった。


ただ、その矛盾となる若い女性の真相が冥婚絵とあまり関係ないことは疑問だった。たとえば直前に冥婚絵を父親が見たことで成長した姿のイメージがかたまり、母親とも共有されたことで、見つけられて身代わりとして選ばれた……といった説明を入れれば、さらに冥婚絵というアイテムが物語の主軸として強固になったと思うのだが。