法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』夏だ!山だ!野比家のキャンプ/インスタントロボット

アニメオリジナルの前半と、原作通りの後半と。


「夏だ!山だ!野比家のキャンプ」は、野比家がキャンプで道具や食材を忘れたことが発端。便利な秘密道具も使えず、ドラえもんは空中に描いた絵を本物にする秘密道具を出すが……
今年からローテに入った高橋悠也の、初アニメオリジナルストーリー。残念ながら全体的に多くの違和感がある。たぶん演出側の問題だろうが秘密道具のディテールも原作の良さから外れている。
原作設定の反映と感じられるのは父の絵がうまいところくらい。いきなり留保なくキャンプ場についている冒頭から首をかしげる。こういう行楽をのび太が求めても原作では拒絶することが大半で、家族でのレジャー自体が珍しいと喜ぶ描写がほしいところだ。
展開もイベントを数珠つなぎでならべているだけで、事前の説明と伏線が足りない。せめて「立体ペインター」の塗料が水溶性であることはボート遊び以前に説明するべきだ。たとえば秘密道具の名称に入れて子供視聴者への注意喚起に利用してもいいし、食べることはできないのに口で溶けた場面で説明してもいい。
すぐそばにキャンプ場がある山でクマが出没するのも唐突だし、クマより強い動物としてゴリラがふさわしいとも思えない。ジャイアンの代替的キャラクターとは理解するが。
何より、下手な絵を描けばその下手なまま立体化して使いにくい道具になるという描写はいいのに、上手い絵を描いた時にわざわざ本物の形状へと変換されるという描写がつまらない。描いた絵がそのビジュアルのまま機能するという異化効果が失われている。しかも、のび太がクマから逃げる時の橋は適当に急いで描いたのに、それなりの橋のかたちに変換されるという矛盾。のび太が描いた下手なゴリラはそのままの形状なのにクマに勝つ矛盾。描写としてつまらないだけでなく一貫性もないのではフォローのしようがない。


「インスタントロボット」は、のび太を監視するためにドラえもんが出した秘密道具を、のび太が逆用。自分勝手にロボットを作って、楽して儲けようとたくらむが……
2008年に「のびロボは役立たず」*1というサブタイトルでアニメ化された短編のリメイク。基本的に原作に忠実で、驚きは少ないが良さを引き出していた。
アニメオリジナル描写は、のび太に母親がおやつのケーキをあげる場面くらい。ここでのび太ロボが横から食べて、それを見て人形遊びとかんちがいした母親が怒ってケーキをとりあげる。のび太がロボットで儲けた時にケーキを買う原作展開を動機から補完しつつ、ロボットにとって無意味なことでもロボットがやりたがる伏線でもあり、単純にギャグとしても成立している。地味だからこそアレンジとして理想的。