法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season17』第12話 怖い家

義父母の遺した家へ夫と引っ越した女性に、さまざまな恐怖がふりかかる。謎の物音に不審な人影。庭にある桜を描いた、意味ありげな桜の絵。
仏壇の蝋燭がともり、洗濯物には赤い手形。女性に強くリフォームをすすめる隣人女性も登場。興味をもった杉下が調べていくと、仏壇に謎の位牌が見つかる……


山本むつみ脚本で、古典的な怪奇映画をオマージュしたような恐怖譚が描かれる。
見ながら連想したのが『ドラえもん』の「ミュンヒハウゼン城へようこそ」*1だ。同じように引っ越しによって怪奇現象に見舞われつつ、映画などでは人間が意図をもって脅していることがよくあると劇中で言及される。
このドラマもやはり意図をもって人間が脅すパターンだと思ったので、がんばっている恐怖演出もパロディのように感じて、あまり怖くなかった。後半で桜の木をめぐって冠城が有名な物語に言及するように、スタッフも意識してオマージュしているのだろう。


真相はリフォームさせるために隣人が脅かしているパターンか、リフォームで秘密が露見しないよう脅かしているパターンかと思っていると、中盤に隣人が驚く描写からの事故死で後者と確定。
隣人が脅かしている可能性をにおわせたまま、事故で気絶した姿が見つかったくらいにとどめたほうが、もっと謎解きを引っぱれた気はする。結末の後味も無駄に悪くはならなかったろう。
そこから予想通りに隠されていた秘密が暴かれていくわけだが、最後にひとひねり。義父母がなぜ桜の絵をかかげていたのか、位牌を置いていたのはなぜなのか……脅かしていた者の思惑とは異なる真実が推理され、ほとんどの謎が解ける。
やや肩透かしではあるが、美しさのある結末ではあるし、死者の思いをわかることは難しいという結論でもある。このドラマシリーズの初期のような、シンプルなプロットに工夫をくわえた展開で、なかなか悪くなかった。

*1:かつて渡辺歩監督が劇場版の原作にしようと考えていたが、藤子プロの意向で違う原作の『緑の巨人伝』となった。後に渡辺歩コンテでTVSPアニメ化されたが、ホラー要素を削ってスラップスティックギャグ化し、まったく原作と異なるテイストになってしまっていた。『大みそかドラえもん さらばネズミ年!来年はモ〜30周年だよスペシャル』ゆうれい城へひっこし/野比家が無重力/ネズミが去るまであと4時間 - 法華狼の日記