法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

たしかに公明党と創価学会に距離ができているように、いまの世界日報と統一協会に距離ができていても奇妙ではないが

長らく連立与党の座にある公明党は、新興宗教創価学会を母体とすることで知られている。
しかし1960年代における言論出版妨害事件が批判された結果、形式だけでも政教分離するため同時にふたつの団体の役職につけなくして*1、その人脈の切断が年月をかさねて実際の距離を生んでいるという。
未読だが、さまざまな協力や対立の逸話をひいて、少しずつ距離が生まれた過程を論じたらしい書籍もある。

もちろん創価学会が集票組織として機能する以上、公明党との関係が切れるわけもないし、影響力は議席数で助けられる自民党にもおよんでいる。
もはや隠れて活動する必要もないためカルト宗教の定義から外れつつある創価学会だが、その巨大さゆえ形式的に開放されていても組織内で社会が完結し、カルト宗教としての性質は維持されている問題もある。


一方で、前々首相との関係などで話題の世界統一家庭連合は、統一協会という悪名高い旧称を変えたり、関係性を隠した団体を多数もっていたりと、いかにもカルト宗教らしいカルト宗教だ。
そうして関係性を隠したメディアのひとつにVtuberへのインタビュー記事が複数あり、Vtuberに好意的な署名活動に別のメディア関係者がいた問題とあわせて、危機感をおぼえた。
hokke-ookami.hatenablog.com
インタビュー記事そのものはアマチュアVtuberが注目された時期にかぎられ、表面化せずにすぎさった問題ではあった。
しかし記事の存在を指摘されたことへの反応に、あらためて危機感をもたずにいられない。


ビューポイントでただひとり積極的にサブカルチャー記事を執筆したという十五夜龍雅氏*2が、note記事でVtuberへインタビューした経緯などを証言していた。
note.com
統一協会と関係が切れているように世界日報へ入社した立場から語る距離感や、取材から執筆にいたるまでの詳細な経緯など、とても興味深い内容ではある。
芸能事務所などが支援していればインタビュー記事を拒否するように助言や要請されると思っていたが、ひとつの記事は支援していた企業*3が監修したという*4

多くの方に声を掛けさせて頂き、株式会社Upd8様に原稿を監修して頂く形式でインタビューを快諾して下さったのがのらきゃっと様です。

しかしカルト宗教との距離については、一般紙やオピニオンサイトだから不可能という自己申告や、会社自体も資金提供がとぎれているから現在は宗教が母体ではない*5という説明くらいしかない。

1:「オピニオンの『ビューポイント』」ってそもそも何なの?宗教と繋がりあるの?

世界日報や電子版は一般紙であるため、メディアとしての中立性を保つ以上宗教的に踏み込んだ話自体がそもそも掲載出来ません。方針を示すとしても政権与党や保守派の記事を載せる事くらいが媒体としての限界点です。

Viewpointのサイトポリシーには以下の様な記述が存在します。

「当オピニオン&コラム『Viewpointサイト』(以下、当サイト)は、特定の団体(政治的、宗教的、各種団体)の意見のみを代弁するものではなく、自由な個人の意見を発表する場を提供しています。」

「当サイトの署名記事(投稿記事等)は、弊社の意見を公式に代表するものではなく、執筆者の責任において意見を公開するものです。」

つまるところ過激な内容や過度な宣伝・勧誘を行う記事を寄稿したとしても取り下げられる為、どうやっても宗教的な勧誘や過度な発言は出来ない媒体です。

3:どうして「オピニオンの『ビューポイント』」は宗教団体と関わり合いが無いと言えるの?母体が宗教団体でしょ?

ここ数年は資金提供が漸次目減りしており自己資本での企業経営を強いられてきた事は、あまり知られておりません。少なくとも私が入社した2016年8月以降は何度もそういった経済的状況である旨の通達は為されてきました。つまり過去に支持母体であったとしても、資本的な協力が無い以上現在の支持母体であるとは見做せないでしょう。

念のため、十五夜龍雅氏が主観的に真実を証言していることは信じてもいい。
統一協会は2012年から教祖の文鮮明死去にともなう混乱があったらしく、一時期は組織の分裂や消滅の可能性がささやかれるほどだった。
それが存在感がうすれて忘れられた一因かもしれないし、関連団体の内部から見ても影響力が落ちていた時期にあたるのかもしれない。


note記事に依拠するかたちで、ビューポイントとカルト宗教の関係自体がデマであるかのように主張する匿名記事もあった。
【朗報】統一教会をネタにオタクを殴ろうとしたはてなサヨク、デマ記事に踊らされたあげく反撃された上追い打ちの記事が追加されて死亡確定

今までは「そうはいってもあの記事を断らなかったんだし怪しいなぁ」という言い訳がかろうじて許されていましたが

その記事を書いた人から「それはない」と断言する死体蹴り記事が来ましたね。

こうこうなったらはてなサヨクのみなさんは「元統一教会者のいうことなど信用できない!うんこちんこ!」くらい発狂してアーアーキコエナイするしかできることないね。

インタビュー記事を受けた脇の甘さ自体が争点であれば、「断らなかったんだし怪しいなぁ」という「言い訳」をする必要も、崩す意味もないだろう。
しかし40以上ついているはてなブックマークを見ると「デマ」という論調を支持するコメントが多く、否定証言への懐疑や口調への批判などはあっても、具体的な反論はない。
[B! デマ] 【朗報】統一教会をネタにオタクを殴ろうとしたはてなサヨク、デマ記事に踊らされたあげく反撃された上追い打ちの記事が追加されて死亡確定

id:yujimi-daifuku-2222 統一協会がいかに危険な団体でも、それはデマに加担して良い理由にはなりません。/洒落にならない団体の根拠のないデマに引っ掛かった件について、ひとりの大人として、何か一言あっても良いんじゃないか。

id:Hige2323 ほんこれ 増田 はてな デマ

id:aa_R_waiwai id:toro-chan 今回のデマに引っかかった人の大半は、それぞれの過去コメントを見る限り、左翼・リベラルを自認する人が大半だろう。なら、当人の意思を尊重して「左翼」や「リベラル」と呼ぶのが適切ではないだろうか。

id:arrack 自分は自身をリベラルだと思っているが、正直今回の騒ぎに同調した「リベラル」と同一視されたくない。また同調しなかったリベラル系の人と区別する必要があるので「はてサ」という言葉を今後は使おうと思う。

id:goadbin これネトウヨの在日認定(しかもデマ)とやっていることは同じだと思うんだけど。しかも発端は渡瀬裕哉からだったと思うが、あの人の仕事の顧客って金融機関から幸福の科学までいるんだけど。

匿名記事はビューポイントとカルト宗教の関係性の証言以外に具体的な話はない。対するコメントも特に記述がなければ証言を支持していると解釈するべきだろう。
しかし両親にしいられた「カルト」との関係を終わったように2012年から主張しながら2021年まで世界日報で執筆していた人物の自認にどこまで客観性があるだろうか。

念のため、2019年でも「大本の団体」への反抗心も語っていた。しかし関係がとぎれていると認識しているなら「大本の団体」という表現をつかうだろうか。

また、他のメディアに対する表現を見ると、自身の釈明記事と比べて、距離の近さをたやすく認定しているように読める。

他に「ズブズブ」といった表現をつかっているツイートとして、マイク・ホンダ氏の訪日にふれたものなどがあった。

くりかえしになるが、十五夜龍雅氏が主観的に真実を証言していることは信じてもいい。
しかし主張を読んでいくと「元統一教会者」という立場などとは関係なく説明の正確さを信頼しづらい。


note記事には100以上のはてなブックマークが集まり、関係性をデマとする主張にくみするコメントもあるが*6、こちらは疑問符をつけるコメントが多い。具体的な関係性も指摘されている。
[B! VTuber] 私の書いた記事を引用している「事実無根の記事でバーチャル美少女ねむ様に風評被害を与えて申し訳ありませんでした→旧記事名:統一教会系メディアとVtuberがズブな件」という悪質なデマについて引用された記事|十五夜 龍雅|note

id:Ereni 中の人の趣味,の線は考えてたが、まさかの記事著者。ただ2019韓鶴子発言見るとhttps://hbol.jp/194170/2/ 協会の日報への影響力は維持。文脈的に影響小ささ強調は判るが,疑問感じる所が/前から今回の様な内容書いてらっしゃるね

id:hiraiwa そもそもなぜ世界日報社に就職しようと思ったのか気になる。実際のところViewPointは記事や執筆者の顔ぶれも保守系にグイグイ食い込んでいて、中立な媒体ではないと思うのだけど。登録ライターには布教本の著者もいる。

id:muchonov 「今の世界日報社と家庭連合には繋がりはない」は藪蛇な気が…。2019年以降もweb版世界日報に記事載ってるし https://bit.ly/3ovIHtp https://bit.ly/3orHnbd 最近の記事だとこの医師は「生み変え」て表現が完全に信者 https://bit.ly/3a20W1l

指摘されているように、もう資本関係が切れた一般紙なはずの世界日報統一協会がくりかえし記事になっているし、文鮮明自叙伝を広げる講師の著作は2020年にも出版されている。

一方で、たしかにビューポイントは世界日報と違ってオピニオンサイトであり、家庭連合と直接の関係がなさそうな保守派著名人も寄稿している。
しかし中立性をたもつため宗教的にふみこんだ記事は掲載されないかというと、そうは思えない。
たとえば国連人権理事会について語った2020年10月の編集局コラム「きょうの主張」で、統一協会に言及するくだりがあった。
国連人権理 強権国家排除の改革進めよ | オピニオンの「ビューポイント」

 人権理は、日本が北朝鮮拉致問題を追及するなど、各国政府による人権侵害を監視する場となっている。12年10月には、人権理の「普遍的・定期的審査(UPR)」の日本作業部会開催に合わせ、世界基督教統一神霊協会統一教会、現世界平和統一家庭連合)やエホバの証人など新宗教拉致監禁問題についてのサイドイベントが行われた。

統一協会をも批判する中立的な文章と感じられるかもしれない。しかし「新宗教拉致監禁問題」は、新興宗教による拉致監禁ではなく、脱会させるための隔離説得を指す表現だ。
また同年9月の編集局は、国連NGOとして活動する国際指導者会議ILCを紹介*7統一協会や家庭連合の名前を出さないかたちで文鮮明韓鶴子を賞賛した。
国連NGOのUPF、「国際指導者会議」開幕 | オピニオンの「ビューポイント」

 開会式であいさつした梶栗正義UPFジャパン会長は、世界的な宗教指導者で平和運動家の故文鮮明師の夫人、韓鶴子UPF総裁が、文氏の「環太平洋圏に平和文明を造る」という意思を引き継いでいることを強調。

 世界平和頂上連合(ISCP)のセッションでは、キリバスのアノテ・トン元大統領、ネパールのパラマーナンダ・ジャー元副大統領、スリランカのマイトリパラ・シリセナ前大統領らが講演した。

日韓友好と世界平和のためとして日本全国を自転車で走るイベント「ピースロード」もくりかえし紹介され、もちろん2020年の記事も確認できる。
今こそひとつに、平和つなぐ自転車が東京走る | オピニオンの「ビューポイント」

 日韓友好と多文化共生を願うメッセージを広くアピールし、自転車で全国各地を走るプロジェクト「PEACE ROAD2020 in Japan」(主催・同中央実行委員会)の出発式が24日、東京都新宿区の明治神宮外苑・聖徳記念絵画館前広場で行われた。

2021年には「韓国紙セゲイルボを読む」というコラムで日韓海底トンネルを推進する韓国版世界日報記事が紹介され、ビューポイント側の岩崎哲氏の解説で当然のように文鮮明が賞賛された。
【韓国紙】議論40年、関心高まる韓日トンネル | オピニオンの「ビューポイント」

過去との大きな違いは、日韓トンネルが日本側から提案されたものではなく、韓国側からだったことだ。しかも、発表の場に世界100カ国以上、約800人の科学者が集った会議を選んだことに文総裁の狙いが込められていた。

 つまり文総裁が単に宗教指導者として「世界平和」を云々(うんぬん)したわけでなく、「世界技術の平準化」を第一に掲げていたことだ。

これらが宗教的な勧誘や過度な発言ではないと十五夜龍雅氏と主張するのなら、それがビューポイントの基準だったのだろう。


たしかにビューポイントには穏当に見える記事が複数ある。
戦場カメラマンの安田純平氏について虚偽を流布して謝罪撤回した記事も、それ自体は宗教勧誘にむすびつく内容ではなかった。

しかしビューポイントが信用されなければ証拠としてつかわれないだろう。安田氏に対する疑惑の主張はビューポイント自体の宣伝として機能したはずだ。
慈善活動をとおして仲間を増やすことは、どのような集団でも珍しくない。対立者や若者をひきこむためには、集団の目的や規則と衝突する手段を選ぶこともある。
手段そのものの穏当さだけでなく、いかなる目的にむすびつくか、そしてそれを隠していないか、といったところからも手段は評価されなければならない。


強い愛着をもたれている人物や作品を巻きこめば、あるいは強く嫌悪されている人物や作品への批判材料をさしだせば、つい油断して同調してしまうのが人間の心理ではあろう。
それが批判された時、必ずしも巻きこまれた者を嫌わなくてもいいし、誰かへの嫌悪を捨てさらなくてもいい。そうすべきと思いこむことは、あるいは責任感のあらわれなのかもしれないが。

*1:こちらのノンブル122頁。http://www.iisr.jp/P101-P125.pdf

*2:ビューポイントでは「市村龍二」名義。

*3:Upd8は支援プロジェクト名であり、会社名はActiv8だと思うが。 www.itmedia.co.jp

*4:引用時、太字強調を排した。以降の引用も同じ。

*5:資金を提供しなければ母体ではないというわけではあるまい。かつて日本共産党に対して、新聞社が趣味で政党をやっているという笑い話があったことを思い出した。機関紙の赤旗は広報のため政党の資金提供をうけるどころか、逆に売りあげが政党の運営資金になっているはずだ。

*6:id:tyubacca3452氏の「今まで色んなデマを見て「なんでそんな事するんだ?」と対岸の火事の様だった。今回のデマは自分に身近なテーマ。個人の極めて利己的で軽率なデマを指摘し質すのに、ここまで多く人達の労力が割かざるを得ないとは…」、id:fishma氏の「根拠の欠片もないデマ・クソ陰謀論記事一つでここまで色んな人に迷惑を掛け、ダメージを与え、なおかつ未だにその陰謀論を引き摺ったままの間抜けも居続ける地獄のようなインターネット」、id:barubari2955氏の「barubari2955 荒唐無稽なデマとして面白かっていたのだがそれでも信じる人がいるし、打ち消すにはこんな当たり前のことに言葉を尽くすコストが発生するんだな。」等。

*7:先日に紹介したように、研究者の木村寛氏が講演したことあるらしい。 hokke-ookami.hatenablog.com  世界平和頂上連合ISCPは2020年2月に発足したばかりだった。 hbol.jp