甲斐峯秋によると、行方不明となった男はたしかに公安の捜査官だった。しかも危険な宗教団体に潜入したことで逆にとりこまれた可能性がにおわされる。
甲斐に制止された特命係は反発して捜査に前向きになるが、それ自体が甲斐の挑発だった……
前回につづく初回SP。冒頭で前回までに判明した出来事を説明しつつ、ちいさなどんでん返しを入れて興味をひく話運びの手際がいい。
さらに前半の宗教団体への大捕物と並行して特命係の地道な捜査をつづけて、ちいさな違和感をつみあげていく。ビジュアルで大写しにされた手がかりの大胆さがいい。祈る方向を決める説明イラストでイスラム教のような既存宗教を連想させて印象づけ、まったく別の場面の描写とくみあわせることで矛盾をうきぼりにする。フェアというには視聴者が気づくことは困難だとは思うが、推理の場面ですぐ思い出せるよう情景は印象づけられているし、映像媒体ならではの伏線として効果的。
そして宗教団体の違和感ある言動から、事件全体の構図をひっくりかえす。このドラマらしい陰謀論だが、近年話題の宗教団体を思わせる設定が先入観をつくったこともあり、杉下が気づく直前までは完全に騙された。
『相棒 season22』第1話 無敵の人〜特命係VS公安…失踪に潜む罠 - 法華狼の日記
予告からは昨年から話題になっている統一協会を連想させたが、かつて警察をねらうようなテロ行為をおこない名前を変えた宗教団体なので、どちらかといえばオウム真理教に近い。
前回と今回で登場した宗教団体「微笑みの楽園」は統一協会でもオウム真理教でもなく、しいていうならパレスチナ解放戦線あたりが近い。そういうドラマだった。
あと、婚約者を執拗に追いかける女性が、恋愛感情とはことなる動機をもっている可能性は前回の時点で予想できたが、最新でいて一般人でもつかえるデジタル技術*1をつかって偽装していた全体像まではやはりつかめなかった。
国家や組織が成果をあげるための代償とした犠牲者の視点がくみこまれたことで、特命係という警察組織の異物が公安だけでなく対立者もふくめて指弾するドラマとして筋が一本とおった。スケールの適度なおおきさなどもふくめて、ここ最近の初回SPではベストの出来だと思う。
*1:無数のランダムな書籍がギフトカードをつかって連絡するためというネタは、本筋とは関係ないし無駄にまわりくどいと思ったが。今回はつかわずに、もっとふさわしいエピソードにあてるべきだったと思う。