法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

制作会社MAPPAの原画カット単価3800円というツイートについての雑感。

かつて『クレヨンしんちゃん』で活躍していたアニメーターの一居一平が*1、『呪術廻戦』等で知られる制作会社の提示額の安さをツイートしていた。


MAPPA制作のNetflix作品に参加しているのだけど、単価が1カット3800円とプロデューサーから提示されたらしい。3800~7000円はテレビシリーズの予算だし、これを請けると全体的にアニメーターの単価は下がっていくことになるし、依頼があった場合は15000円以上で交渉するのが最良だと思います(注意喚起)


@fukudanoriyukiさん
一原2000です

基本的にカットとはひとつながりのシーンのことで、基本的には動きの基礎的な絵を何枚も描かなければならない。3800円は現在でも安めらしく*2、クオリティを売りにするような仕事ではかなり厳しい。その清書前の段階に当たる第一原画で2000円というのは、視聴者の立場からしても安すぎる。


これらのツイートが話題になり、特にネットフリックス受注作品にしては安すぎるから中抜きではないかと疑われている。
それを受けるようにMAPPA側も抗議声明を出していた。
株式会社MAPPA

事実関係ですが、未発表である当該作品は、大手プラットフォームより弊社が制作受託した案件ではございません。

当該作品は、過去に弊社が制作し、弊社および製作委員会が待望したTVシリーズ作品の新作であり、製作委員会幹事会社から大手プラットフォームへの販売が確定したことで、ようやく制作の受注が実現しました。制作費も、その販売金額を元に設定されております。

この「大手プラットフォーム」がネットフリックスのことだとすると、特別に受注したのではなく販売先のひとつにすぎず、そこまで制作費が高いわけではないのかもしれない。
しかし、そもそもカット単価として格安すぎるという批判なので、たとえ中抜きがなくても発注額がおかしいという批判はありうるだろう。


また、いくら情報漏洩をおそれている未発表作品といっても、関係する企業や人物の説明に具体性が欠けすぎていることは気にかかる。

未発表である作品においては、場合によって関係者が契約違反に問われ、作品制作自体が頓挫するリスクを孕みます。弊社としましても、このような情報漏洩には、強く抗議するとともに、断固とした措置をとる所存です。

守秘義務などで固有名詞を出せないならば、作品が完成して納品されるか、最悪でも中止した後に情報をあらためて出すべきだろう。少なくとも今回で説明を終わりにされても困る。
資本力のある会社側が弱いフリーランスに対して、守秘義務や情報漏洩を恣意的に認定している問題については、平川哲生監督も苦言をていしている。


あの抗議文は「イメージアップ&宣伝効果がある情報はスルーするけど、そうじゃない情報は漏洩と判断して抗議&措置を取ります。これに関してガイドラインはないしNDA契約も結ばないので、俺たちが勝手に決めますからね」と言ってることになっちゃうんですよ。MAPPAにその意図がなかったとしても。


ちなみに6月25日にも同じような話題をツイートしている。これがネットフリックスに販売されるMAPPA作品だとすれば、『神撃のバハムート』の新作なのかもしれない。


一原単価が2000円の奴隷単価のNetflix作品の演出打ち合わせをしてきた。OVAだぜ。おいNetflix


某音楽会社が間にあるから、らしいですが。
真実はよく分からないです。wiki見ると上妻さんが良く参加されている

シリーズ2作目に上妻晋作が定期的に参加していること、ネットフリックス受託の独占作品ではないことが推測の根拠だ。
資金の潤沢なサイゲームスが制作費を出しているハイクオリティ作品だが、実は1作目でも単価のトラブルをアニメーターの江口寿志がツイートして、第1話しか参加しなかったことがある。

*1:2010年代の『ドラえもん』でも少し参加していたことがあり、かなり良好なアニメーションが楽しめた。 hokke-ookami.hatenablog.com

*2:やりとりしているふくだのりゆき監督は、適正単価を8000円と試算している。他業種のフリーランスの平均収入から、平均的にこなせるカット量をわった試算とのこと。十年以上前の計算なので、現在はもう少し高い単価が求められるだろう。 motoz5.cocolog-nifty.com