法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

中国での幕府山事件の捕虜虐殺を正当化する妄言と同程度のツイートが21世紀の日本で流れていた

幕府山事件とは日中戦争で日本軍のおこなった虐殺のひとつで、捕虜をあつめて裁判もなく機関銃で皆殺しにしたと考えられている。
近年では清水潔氏の調査によるドキュメンタリー番組が深夜ながら地上波で放映され、再現映像ともども印象深い内容だった。

「南京事件」を調査せよ (文春文庫)

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相手がどのような罪をおかしていたのであれ、いったん捕虜にしたならば罰をくだすには裁判が必要。その手続きをおこたれば虐殺となる。


同じように、「もへもへ@gerogeroR」氏によるBLM運動への非難も、「遵法精神」というものを根本的にとりちがえている。
[B! BLM] もへもへ on Twitter: "正直BLMが、日本でぜんぜん共感されないの、遵法精神強めの我が国では「警察に殺害された黒人さんに誰一人潔白な人がいない」からだと思う。"

正直BLMが、日本でぜんぜん共感されないの、遵法精神強めの我が国では「警察に殺害された黒人さんに誰一人潔白な人がいない」からだと思う。

本題に入る前に、明らかな事実誤認がある。
たとえば自宅で恋人と眠っていたブリアンナ・テイラー氏は、住所を間違えてふみこんだ警官に射殺された。仮にテイラー氏が何らかの罪をおかしていても、射殺された経緯と関係はない。
米でまた警官が黒人を射殺、誤った住所に踏み込み8回発砲 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

救急救命士のブリアンナ・テイラー(Breonna Taylor)さんとその交際相手が就寝中に警察が踏み込み、テイラーさんに8回発砲した。

 事件について明らかにしたテイラーさんの弁護士、ベン・クランプ(Ben Crump)氏によると、無警告で破壊器具を使用し、ケンタッキー州ルイビル(Louisville)のアパートに突入。しかし警官らが持っていた住所の情報は不正確で、警察が行方を追っていた容疑者はすでに拘束されていたという。

逆に、よく前科や容疑がとりざたされるジョージ・フロイド氏にしても、清廉潔白な黒人が殺害されたと思われて抗議が起きたわけでではないし、共感されたわけでもない。
撮影されるほど衆人環視の状況で、周囲から意見も出ていたのに、必要もなく警官が長時間の圧迫をつづけて、苦しませるよう殺害したことが抗議がもりあがった最大の要因だろう。
それに潔白でないことは共感をさそわない絶対条件ではない。2009年の射殺事件は映画化されたが、主人公は前科者として描かれつつ、たちなおろうとする姿は共感をさそう。

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もちろん映画には取捨選択や誇張はあろうが、そもそも飲酒運転をさけるため電車で移動してケンカに巻きこまれた経緯から射殺されたのだ。


さすがに批判が殺到したためか「もへもへ@gerogeroR」氏はロックされたそうで、修正したツイートを投下している。しかし共感できないという本題は変えていない。


ロックされたので書き直し。BLMに共感できないのは「警官に殺された黒人に前科なしや潔白な奴がいなかったから」ったら「無実の人もいた!!!」って反論された。「一人も無実な奴はいない」は言い過ぎだったので謝罪。

ただ「かなりの割合で犯罪や前科者」だったので共感できないってのはかわらん。
そりゃ殺されたやつのかなりの割合が「全く過失がなかった」のに黒人ばかり殺されたのなら共感もするが、そうじゃないんだから「共感はできねぇ」って話。

で、なぜか「殺されてもいいと言うのか」とか言う人が湧いてきたのではっきり言うけど「やりすぎだけど、向こうも問題あるよな」でしかない。

潔白でない人であれば必要性もなく殺害されたことへ抗議しても、共感されないのだろうか。
たとえばジョージ・フロイド氏を死なせたために第二級殺人の罪に問われ、弁護側は第三級殺人*1と主張した警官が殺害されても、「やりすぎだけど、向こうも問題あるよな」でしかないのだろうか。
先に南京事件で日本が虐殺した事実のため、広島や長崎に原爆が投下されたことへの抗議は「遵法精神強めの我が国」で共感されないのだろうか。
感情的に共感できないことはしかたがないにしても、せめて理解することくらいはできないものだろうか。

*1:日本であれば傷害致死くらいにあたるらしい。