法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「来宮駅のバリアフリー」を現状で誰が「成し遂げている」の?

車椅子での乗降についてJR側の回答が二転三転したとうったえる伊是名夏子氏へ、「批判」しようとする匿名記事があった。
単純化してしまうと、批判と、攻撃を区別することが出来ない奴が多すぎる..

一般人が論理的に考えた上での批判と、感情から出てくる攻撃との区別をし続けられるはずがない。

上記のように批判と攻撃の区別をうったえる匿名記事は、「伊是名案件でもそうだけど」とJRに「全くの問題がない」と主張する。

伊是名の行動は批判に値するし、来宮駅に関しては移動手段の提示もなされたし既にバリアフリー化の計画もあるので全くの問題がないが、

一方でバリアフリーそのものは進めていけばいいというだけの話で、実際に来宮駅バリアフリー自民党が成し遂げている訳でしょ。

社会党がやった事は、火のない所に煙を立てようとして、JRに迷惑をかけただけでカス同然だが、それはバリアフリー自体の必要性を否定するもんでもない。

一読して、匿名記事こそが伊是名氏を「批判」したいあまり今ある「火」を否認していることがわかる。そうでなければ「バリアフリー化の計画もある」とまだ計画段階にすぎない話を「成し遂げている」*1と表現できるはずがない。
そもそもJR側が最初から明確な説明をおこなって階段の昇降を介助すれば「煙」はたたなかった。その「煙」を伊是名氏がたてようとしたというなら陰謀論でしかない。


伊是名氏のブログで最初のエントリを参照しても、JR側の説明や対応が二転三転して時間と体力が浪費されたことに「全くの問題がない」とは思えない。
JRで車いすは乗車拒否されました : コラムニスト伊是名夏子ブログ

乗りたい時刻の30分前に小田原駅に到着。

小田原駅の改札で

来宮までお願いします」と伝えると

駅員Aに「案内は15分前にするので、そのころにいらしてください」と言われる。

小田原かまぼこやお菓子を買って、再度窓口へ。

「お願いします」と伝えると

駅員Aに「来宮駅は階段しかないのでご案内ができません。熱海まででいいですか?」

と言われる。

最初に駅員Aが伊是名氏を待たせてから要望とは異なる乗降駅を提示したことが、はたして何の問題もないといえるだろうか。
逆に後述の駅員Cは、熱海駅が人力による乗降手段をおこなわないと説明していたが、現地に到着すると対応する駅員が待っていた。
このエントリの説明を信じるなら、JR側の駅員間の知識や意思の共有に問題があったと評さざるをえないだろう。


匿名記事のいう「移動手段の提示」についてもよくわからない。
代金を伊是名氏が負担するかたちでタクシーの移動をJRが提案したことが、「JRに迷惑をかけただけ」になるのだろうか。

駅員C「来宮駅はお使いいただけませんので、熱海駅までで。その後はご自身でお考えになってください。」

私「どうやって?」

駅員C「タクシーなど」

私「ではタクシーを調べてください。車いすごと乗れるタクシーはだいたい1か月前の予約なので厳しいと思いますが」

駅員C「そうですか。では一応調べますが、代金はお客様負担で」

私「駅は公共交通機関です。駅員さんを3,4人、集めてくれませんか?」

駅員C「熱海駅は一切そのような手配は行っておりません」

ちなみに、車椅子の階段昇降をJRが人力で補助する事例は5年前にもあり、ここでの伊是名氏の要望が過大なものとは思えない。
mainichi.jp
匿名記事とは別個に、電動車椅子の重量をことさら主張する意見を散見していたが、上記の毎日記事では人を乗せたまま業者が2人ではこんでいる。
後述のように4人がかりで電動車椅子だけを昇降させた今回は、単純に重量だけで見れば労力は少なくてすむだろう*2

タクシー会社の電話番号をもらいましたが、対応できるかは、わかりませんとのこと。

とにかく熱海駅まではいくしかないと、予定よりも1時間遅れて電車に乗せてもらう。

そして熱海駅につくと待っていた駅員4人により、階段の昇降を介助してもらった。しかし伊是名氏は1時間待たされ、情報を「提示」されずに行動している。
仮に駅員を集める時間がかかるならそう説明するべきだったし、そこでかかった時間もまた車椅子ユーザーにとって「バリア」といえる。
ここで「バリア」を乗りこえられたのは時間をかけてうったえた結果だ。なしとげた登場人物は伊是名氏と、それにこたえた熱海駅であり、自民党ではない。


最後に、伊是名氏はエントリで「疑問」を箇条書きでまとめている。そこに今後の建造物のバリアフリー化は入っていない。

疑問なのが

小田原駅熱海駅が言うことまったく違ったところ

・どうして急に熱海駅の対応が変わったのか

・駅長Dさんは丁寧だったけれども、車いすへの対応をしたことがないようで、まったくわかっておらず、私が質問したら、それを調べ、対応してくれる形だった。

車いすユーザーは利用者に入っていないのか。

JR側が車椅子ユーザーへの説明がきちんとできず、対応しようとした駅長ですら知識が不足していたというのが伊是名氏の批判だ。
前後して、構内図のわかりにくさや、事前連絡の必要性がつたわらない問題を、駅長Dに話した描写などもある。
今後にバリアフリー化を計画していることは、これらの伊是名氏の疑問や要望への反論にはならない。

*1:また、自民党が「計画」を進めているという情報から来宮駅バリアフリー化におけるコストを追及する意見が後退したならば、政党によって「批判」の基準を変えている恣意性も疑われる。

*2:もちろん慣れの問題もあるし、重量の移動で人数で単純に割ることはできないし、人間をはこぶ責任を負うか否かの違いなどはある。