2時間SP。前半は2月に放映されたSP*1を思わせるミニ映像コーナーだが、その時に比較的に良いと思った下野紘だけが通常ナレーターとともに担当していたので、TV番組としては楽しく見られた。
さまざまな救出劇のダイジェスト紹介は、パリの黒人スパイダーマンをはじめとして見なれたものもあるが、連続して視聴すると人間の力を信じられるのが良い。
スキューバダイビングしていた子供がダウンカレントで海深く沈んでしまった時、いったん海上に出ておいて再び潜水して減圧症をふせいだ父の判断。小型船が沈んで約20時間も海上を漂流するはめになった時、邪魔になる洋服をぬぎすてて全裸で浮かびつづけて助けを待っていた男。
後半のミニ映像コーナーだが、ウェイクサーフィンしていた父娘で、幼い娘が白波に興味をもって手をのばしたのを片手でひきあげた父親の筋肉ぶりも目を引いた。
世界の危険なツアーでは、メキシコで米国への密入国を疑似体験するツアーと、リトアニアで旧ソ連のKGB尋問を疑似体験するツアー。
前者は実際に密入国をおこなっていた者もスタッフとして参加し、密入国者をねらう盗賊や国境警備などに追われる恐怖を知る。そこから社会問題にどう参加者が向きあっていくかは描かれず。
後者はただ尋問されるだけでなくスパイになるよう勧誘されたりして、ミルグラム実験を思わせる要素もあるが、今のリトアニアでは反ロシア的な運動という側面も強いのだろうな、と感じた。
世界で困難な通学をおこなう地域を紹介するドキュメンタリーシリーズは、今回はボリビア。道なき道をとおって山をおりる姉妹と、谷間にわたしたワイヤーを滑車でつっきる兄弟。
貧しい生活から脱出する期待をかけて子供たちを学校へやる小卒の母親。老朽化した危険なワイヤーを子供をかかえて滑り降りる父親。無料の給食に喜ぶ子供たち。そんな人間模様。
ただスタジオで北野武が指摘したように、斜面をころがってしまう姉*2が、まるで演技しているように見えたのは同感だった。カメラの前で、過去のトラブルを再現してあげたのかもしれない。
いつもの男女ふたりの全裸サバイバルショーは、今回なぜか男ひとりに女ふたり。
普段のサバイバル的な失敗を重ねる男女*3に対して、ヨガインストラクターの女性は超然と距離をとる。アメリカ先住民をルーツにもつプロフィールともども、野蛮の聖性を体現するかのような対比。
しかしサバイバルの実践術として、意外と理にかなっていることもわかっていく。熱帯雨林が舞台なら自然の猛威を考慮して目標に固執しない臨機応変さは大切だし、たかだか3週間なら水分補給だけ重視して狩猟で体力をつかわなくてもいい。
最終的に救出地点へむかうイカダづくりにおいて、休んで体力を温存していた女性がてきぱきと働き、女性ふたりでサバイバルに成功して終わり。
最後は記憶に新しいレバノン首都ベイルートの大規模爆発事故について。
新型コロナ禍以前の大事件という記憶があったが、日本でも危機感が高まっていた2020年8月のことで、まだ一ヶ月もたっていない。
下記記事によると複合的な要素の多い人災だが、今回の番組では原因物質と保管された経緯を手早く説明し、反政府デモに言及したくらい。
natgeo.nikkeibp.co.jp
ともかく今回は多様な被害を紹介し、災いに見舞われた人々を少しでも記録にとどめようとするドキュメンタリーとして、これはこれで重要だと思えた。
*1:hokke-ookami.hatenablog.com
*2:妹はそれを真似して転がっていることがドキュメンタリー内でも語られる。
*3:男のもちこんだ発火装置はうまく作動せずに壊れ、男は虫刺されのアレルギー症状がはげしくてリタイア。修繕した発火装置で着火に成功するも豪雨で消えてしまう。