2018年に「WalkAway」という運動が注目されたことがある。
元リベラルと称するゲイの美容師ブランドン・ストラカが、既存のリベラルに失望して距離をとろうと提唱した運動だった。
togetter.com
それを紹介する2018年のTogetterは好意的な注目を集め、はてなブックマークも600以上ついていた。
WEBメディア「SYNODOS」の西山隆行記事でも、民主党が現状のままではトランプ支持者に勝てない一例のように分析された。
synodos.jp
日本の著名人としては、 表現規制反対活動をしている高村武義氏*1が賛意を表明し、2021年になってもツイッターのハンドルネームに「#WalkAway」と記載している。
”人が人として尊重される社会。これがリベラルの基本ですよ。”といってる当人が、批判意見に対してレッテル貼りで攻撃。図らずもブランドン・ストラカ氏が提唱する #Walkaway が正しいことが実証された。
— 高村武義 #WalkAway (@tk_takamura) 2019年5月9日
しかし注目を集めた時点で、米政界をロシアが操作する「ロシアゲート」や、匿名掲示板発の陰謀論者「Qアノン」との関係も疑われていた。
edition.cnn.com
はてなブックマークではid:Ereni氏がフォロー欄からの疑わしさなどを指摘していた。
[B! リベラル] 昔々、私はリベラルだった。 - Togetter
ストラカの相互フォローはフリン、カサンドラ・フェアバンクス、ポソビアック、サーノビッチ,全員露の工作に関係する面々/7月CNNがクレムリンと関連する露botがWalkawayタグと関係してる事を指摘https://cnn.it/2NpjqLP (メタブ
[B! 国内] [B! リベラル] 昔々、私はリベラルだった。 - Togetter
Walkaway絡みで村民に注意喚起するのはこれで3回目だクソッタレhttp://b.hatena.ne.jp/entry/370564721/comment/Ereni タグからどう見ても露。ツイ主が自覚してるかは兎も角,はてブが露の世論工作ターゲットになったという事。おめでとう
逆に上記の指摘こそ「陰謀論」と笑われているとid:rag_en氏がコメントしていたが、その根拠はカルト宗教メディアの大紀元*2にすぎなかった。
[B! 表現・思想] ストラカの相互フォローはフリン、カサンドラ・フェアバンクス、ポソビアック、サーノビッチ,全員露の工作に関係する面々/7月CNNがクレムリンと関連する露botがWalkawayタグと関係してる事を指摘https://cnn.it/2NpjqLP (メタブ - Ereni のブックマーク / はてなブックマーク
(余所でも既に張られてるが)https://www.epochtimes.jp/2018/07/35004.html「陰謀論pgr」されてる。
私から見ても背後関係はともかく*3、運動そのものに妥当性を感じられず、「#Walkaway」に距離をとったエントリをあげた。
hokke-ookami.hatenablog.com
やがて「#Walkaway」は日本のインターネットでは注目されなくなり、同種だが極端な陰謀論者「Qアノン」などへ支持も批判もうつっていった。
hokke-ookami.hatenablog.com
ハッシュタグなどをつかう人は残っているものの、熱気を感じさせる運動にはならなかった。はてなブックマークは集まらなくなった。
そして2020年11月、「#WalkAway」で失われたはずの民主党支持者により、米大統領選はバイデン圧勝で終わった。
2021年1月になってもトランプ支持者は大統領選の敗北を認められず、扇動にのって米国議事堂を襲撃した。それに参加した「Qアノン」には経営者も州議会議員も五輪金メダリストもいた。
www.bbc.com
その襲撃者のなかに「#WalkAway」創始者のブランドン・ストラカもいた。NBC記事によると、FBIに逮捕されたという*4。
www.nbcnews.com
富裕層や著名人が支配する民主党に本当の弱者が決別したはずの運動は、私腹を肥やす大富豪へ経営者たちが暴力で権力をあたえようとする暴動にいきついた。
冒頭のTogetterをまとめていたDrStrangel氏も、日本で注目をあびなくなった後まで「#WalkAway」を熱心に紹介しつづけたが、やはりトランプ敗北を認められなかった。
togetter.com
上記のTogetterは2020年11月17日にまとめられている。すでに米連邦選挙当局が不正はなかったと調査発表し、バイデン勝利が確実視された時点なのに、下記のような説明をつけていた。
#WalkAway 第五十九弾 断末魔の叫びをあげ続けファクトもへったくれも無くなりふり構わず影響力誇示のイカサマに血道をあげる日米の #リベラルサヨク の明日はどっちだ❓
いうまでもなく「リベラル」にも「左翼」にも問題は多々ある。しかしそれに反発して別の救世主にとびつくようでは、藁屑をさしだす詐欺師にだまされるだけだ。
かつて信奉した思想が誤っていたと思ったなら、すぐ対極の思想になびくべきではない。まずは最初になぜ信奉したのか、深く自己と思想を見つめなおすべきだろう。
*1:はてなアカウントはid:taka_take。
*2:後述の米大統領選でも、いつまでもトランプ大統領周辺が流す陰謀論をそのまま日本語圏へ流布していた。
*3:そもそも外国の介入などなくても「サヨク」から転向する人はいるし、それが「Jアノン」にいきつくこともあるだろう。一例として、トランプ大統領就任以前から共産党を離れた軍事評論家の篠原常一郎氏が「Jアノン」になっている。
今日はこの一連のツィートをよく読みましょう。1月6日に起きるべき米上下院の動きが丁寧に説明されています。 #米大統領選 #トランプ再選 #不正選挙 https://t.co/SgxikMXwaw
*4:ニューズウィーク本国版によると、1月末に起訴されたらしいが、2月末の現在どのような状況なのかは信頼できそうな情報を見つけられなかった。仮釈放はされたらしいが。 www.newsweek.com