法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

いわゆる「Qアノン」がつくった児童売買陰謀論の映画『サウンド・オブ・フリーダム』が、日本国内でなんの注意もなく公開とのこと

 映画ナタリーのツイート*1を引用するかたちで、「ビニールタッキー@vinyl_tackey」氏が警鐘をならしていた。


児童人身売買の闇に挑む捜査官を描いた「サウンド・オブ・フリーダム」公開
https://natalie.mu/eiga/news/577606

#ジム・カヴィーゼル


完全にQアノン信者になってしまったジム・カヴィーゼルが法的にも倫理的にも問題のある実在の人物を基にQアノン信者の監督と作った映画が何のエクスキューズも無しに日本公開決定してて頭を抱えてる。

 映画ナタリーの記事全体を読んでも、実話にもとづく映画という宣伝とスタッフの紹介をしているだけで、制作され観客をあつめた背景は説明されていない。
児童人身売買の闇に挑む捜査官を描いた「サウンド・オブ・フリーダム」公開 - 映画ナタリー

児童人身売買の闇に挑んだ実在の人物、ティム・バラードをモデルにした本作。

 念のため、映画ナタリーが特別にひどいというわけではなく、より文章量の多い映画ドットコムの公開予定記事なども「Qアノン」との関連は言及されていない。
【全米で異例の大ヒット】児童人身売買の闇に挑む捜査官の実話「サウンド・オブ・フリーダム」9月27日公開 : 映画ニュース - 映画.com

本作は、児童誘拐、人身売買、性的虐待といった、国際的性犯罪の犠牲となった少年少女を救い出すため、過酷なミッションに挑んだ実在の人物ティム・バラードの闘いをもとにした衝撃の物語。インディペンデント作品であるにも関わらず、全世界累計興行収入は2億5000万ドルを突破した。


 すでに日本国内でも2023年にはフォーブス記事やニューズウィーク記事で作品の背景について詳細な解説が書かれている。
Qアノン陰謀論との関連で「物議の映画」が米2位に急浮上 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

この映画は、バラードと彼を演じた俳優のジム・カヴィーゼルの両名が、過去にQアノンの陰謀論を宣伝していたことから、批判されている。バラードは以前、家具小売業者のウェイフェアが子どもの人身売買に加担したという根拠のない噂を流布していた。

一方、カヴィーゼルは複数のQアノンのイベントに登壇し、人身売買組織が子どもたちの血液から、ハリウッド俳優たちが使用するアドレノクロムと呼ばれる若返りの特効薬を抽出していると述べていた。

小児性愛者や人身売買業者が登場する『サウンド・オブ・フリーダム』は派手なQアノン映画か? まともな批評に値する作品ではない理由|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

作中でQアノンやそれに類する陰謀論が語られることはない(映画の製作は一連の陰謀論が広まる前に始まっていた)。だがカビーゼルは本作の宣伝ツアーで、子供の身体の一部が国際的な闇市場で石油の1000倍の高値で売買されているのは事実だと、熱く語っていた。

現実のバラードも、毎年1万人もの少年少女が性的搾取の目的でアメリカに密輸されているという、何の裏付けもない数字を言いふらしていた。この数字を、ドナルド・トランプは2016年の大統領選で何度も何度も繰り返したものだ。そして大統領就任後のトランプは、バラードを国務省の人身売買諮問委員会の共同議長に据えている。

 宣伝において注意するまでもなく観客が上記のような情報を認識して鑑賞するのならいいが、現時点では宣伝の時点でなんらかの断り書きがほしいところだ。

*1:現ポスト。