法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「walkaway」なる「サヨクにサヨナラを」な運動について少し

下記のような匿名エントリがブックマークを集めていた。
https://anond.hatelabo.jp/20180906165251

アメリカではポリコレのバックラッシュとでもいうべき"#walkaway"というムーブメントが起きているそうな。

https://biglizards.net/strawberryblog/wp/2018/07/14/%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%81%8C%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%9A%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%94%BE%E3%81%99%E6%99%82%E3%80%81%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4/

端的に言って「もう今の左派には付き合いきれない。サヨナラだよ」って感じの決別宣言をカムアウトする運動。

引用元の「苺畑より」は、約十年前には有名だった保守ブログ*1で、エミコヤマ氏への論難などで注目を集めていた。
2008-01-09 - *minx* [macska dot org in exile]

わたしが疲れちゃうのはカカシさんの議論姿勢が、とにかく相手を左翼だマルクス主義者だジェンダーフェミニストだとレッテル貼りするだけで論理が通じないことが理由なんだけど、わたしの「疲れ」まで考えてくれるならまずそっちをなんとかしていただきたいところ。

ここでエミコヤマ氏を疲れさせていたのはリベラルではなく、ブログ主の苺野カカシ氏であった。


それはさておき、「#walkaway」なるハッシュタグがもりあがっているように見えるからといって、それが過去との決別を実際に示しているかは別問題である。
たとえば「朝日新聞捏造報道した従軍慰安婦問題」*2なる事実誤認で訴訟をおこなった「朝日新聞を正す会」が敗訴確定した時、産経新聞は「朝日新聞読者らの敗訴確定」と表記して失笑された。
はてなブックマーク - 朝日新聞読者らの敗訴確定 慰安婦報道巡る集団訴訟 - 産経ニュース
一応、「朝日新聞を正す会」が朝日新聞の購読者という建前でおこなった訴訟ではあるが、トップページから「反日朝日新聞」と表現するような認識の団体でどこまで信用できるかは、察するしかない。


ブックマークコメントを読んでいけば、id:mugi-yama氏やid:Ereni氏が「#walkaway」の実態に疑念をていする情報を提示している。
はてなブックマーク - 「サヨクにサヨナラを」

言及してる記事がえらい大雑把なんで、なんか他にないかぐぐってみたら id:entry:370570659 というのが

先日グラフで話題になってた学者もWalkawayタグを推奨してたが,Twitter検索したら一緒についてたタグが QAnon obamagate MAGA あたり。もろロシア系陰謀論ルート http://b.hatena.ne.jp/entry/370390078/comment/Ereni /引用ブログの内容もお察し

「#walkaway」の投稿はたしかに多いが、その大半が以前に自由主義者であったという証拠はほとんどないことや、注目を集めながら真実味が疑わしいツイートの事例が指摘されている。
また、id:rag_en氏のコメントも意図せず興味深い。定義問題化が面倒だからと独自定義をおこなう謎はさておき、「元々の記事」として示しているのが「大紀元日本」。

増田が悪いわけではないとは思うが、そういうくだらない定義問題化されるのが面倒だから、自分は「Social Justice」界隈という呼称を用いてる。/「左翼」って言い方は元々の記事からやぞhttps://www.epochtimes.jp/2018/07/35004.html

たとえば聖教新聞日本共産党を批判する記事があったとして、どれほど深く裏づけされた内容かは、読者が察するのがたしなみというものだろう。


もちろん左翼から右翼へ転向する人がいること自体に不思議はない。たとえば日本でも藤岡信勝氏のような著名人がいるように、いつでもどこでも起こりうる。
だからこそ、そうした転向が潮流と呼べるほど大きな動きになっているか、そしてその動きが肯定すべきものか、それぞれ見極める必要があるだろう。
先述の訴訟で原告が本当に転向した朝日新聞読者だったとして、完敗することで朝日新聞従軍慰安婦報道が妥当なものと確定させたことは本意ではあるまい。
慰安婦報道をめぐる裁判の記事を掲載しました | 朝日新聞社インフォメーション

*1:エミコヤマ氏と“論争”が始まる発端のエントリが、瀬戸弘幸氏のブログエントリを読んで「ジェンダーフリー」という言葉が目についたという書き出しになっている時点で、少なくとも右派と察することはできるだろう。In the Strawberry Field:エントリー “ジェンダーフリーという神話”

*2:ごあいさつ - 朝日新聞を正す会