裕福な家庭で、幼い息子を金銭面でつきはなす父親と、大金をあたえる母親がいた。その父親は強引な出店計画をとどこおらせている年上の部下も叱責する。
その息子とは別の傷ついた幼い少年が街角にいた。杉下が声をかけると、少年は自分より友人を助けてほしいとうったえる。どうやら誘拐事件が発生しているらしい……
一代で業績をのばしたネオリベ的な経営者と、どうやら社会に追いこまれた立場らしい誘拐犯。前者の思惑で隠蔽されている犯罪を警察が追うことで、ふたつのドラマを同時に展開していく。
残念ながらサスペンスとしてはひねりが弱く、経営者の隠し金を奪う犯罪ゆえに、誘拐犯は正面から金銭を要求してあっさり入手しかける。
特命係の捜査も、一課トリオとの協力*1だけで事件があっさり解決していく。青木の監視がついでに入るくらい。
イレギュラーはたったひとつ、誘拐事件について友人を救ってほしいと特命係にうったえた少年だけ。しかし虐待されているとおぼしき少年は、ドラマの本筋でほとんど登場しない。
そしてドラマが終わる時、決死の覚悟で少年が救おうとしたはずの被害者が、意外な性格の悪さを見せて、誘拐犯の人目につく行動のちょっとした謎が解ける。
誘拐事件という予告情報で感じていた以上に第12話とネタがかぶっていた*2。以前のエピソードでも書いたが、本当に今期は短期間で似たストーリーが連続する。
そこから被害者は友人に本性を隠していたのかと思いきや、実は虐待されていた少年の友人は別人だったという真相があかされる。
事件の内容はほとんどかわらないのに*3、ドラマとしては印象がまったく違うものとなった。
事件関係者の動機を深堀りし、うまく社会で生きていけない者がよりそう姿を描きつつ、そのドラマとサスペンスの関係で意外性を出す。中盤の杉下右京の捜査で感じられた犯人側のドラマも、初見より印象深くなった。
先述のように犯罪の根幹で似たエピソードがつづいているが、ドラマの枠組みから変化しているので、かなり素直に驚くことができた。最終的には悪くない回だったと思える。
*1:本来なら誘拐事件で一課の三人だけ捜査するはずがないと劇中でも指摘され、まだ事実かはっきりしていないためと説明される。おそらく新型コロナ禍でエキストラを大規模につかえない撮影の都合もあるのだろう。
*2:hokke-ookami.hatenablog.com
*3:犯罪の責任の軽重などは変わっていくだろうが。