死者のノートを持ち去った少年を杉下は探そうとするが、少年を守ろうとする月本は断る。次に、身寄りのない若者たちがつどうバスケチームに杉下が行ったところ、彼らを影から支援する「ダディ」という人物がいることを知る……
前回の続きで、スタッフもそのまま太田愛脚本に橋本一監督が続投。
サブレギュラーの月本をめぐる前後編として映像に力が入っていて、地下駐車場の少年と黒幕の格闘や、犯罪グループを摘発する大立ち回りはTVドラマとしてはがんばっている。さまざまな街角でロケして、調べてまわる特命係の周囲に平和な子供たちの姿が映りこみつづける演出も地味にいい。
ただミステリとしては、期待したほどの意外性や妙味が謎解きになかった。
捜査が進むにつれて混迷度を増していった前編*1と違って、早々に事態の背後にある犯罪が振り込め詐欺と確定させてしまったのが良くない。
居場所のない若者たちのひとときの楽しみをボランティアとして支える青年*2とダディが犯罪に導いていたという真相は、太田愛脚本らしい残酷さだが、過去の名エピソードと比べると予想の範囲内だ。
少年が黒幕と対峙するために知恵と勇気をふりしぼり、それを月本が追いかけながら支えようとするドラマとして印象深くはあったが、結果として今回は特命係の存在感が弱い。
シリーズを通じてたびたび存在感を発揮してきた月本が卒業する描写は良かったし、それとオーバーラップするように亀山薫が映像として回想されたことは感慨深く思いはしたのだが。
*1:『相棒 Season17』第18話 漂流少年~月本幸子の覚悟 - 法華狼の日記
*2:仕事関係で知りあった青年が、よく似た立場で少年スポーツコーチをしていて、ちょっと連想してしまったのが良くも悪くも後を引いている。ドラマで出てきたコーチが表層で演じていたような好青年であり、体育会系の気風をもちつつも勝敗より子供たちの心身をいたわることを優先する価値観に感心している。