猛毒のTXガスを個人的に製造していた化学メーカーの社員が、そのTXガスで殺された。一方、シングルマザーのデザイナーの息子が何者かに誘拐された。現場に残された人気マスコットキャラクターを特命係が発見する。誘拐被害者のデザイナーがそのマスコットキャラクターを作ったとされているが、実際にデザインしていた部下は亡くなっていて……
川崎龍太脚本。ひさしぶりに個人がひきおこした大規模でトリッキーな事件。舞台が次々に変わってアクションも充実。新型コロナ禍がつづいていることを忘れたようなエキストラの多さも、日本ドラマとしてはスケール感がある。
このドラマ特有の行動力にあふれた中年女性も、怪しげな行動の迷走する若者もキャラクターが立っている。1時間ドラマで思惑の異なる登場人物が多すぎないかと思ったが、いつもと違って特命係と一課が協力して無駄な時間を食わない。
むしろ、人気キャラクターのデザインをめぐって本当の作者が別にいることを早々に説明したのは、事件の全体像を見やすくしすぎた。複雑な事件のようでいて、思いつめての復讐と、その手段をえるために起こした事件というふたつのプロットが並行していることがわかりやすい。現在の事件では関係しあうが、人間関係が切りはなされているので、誰がどちらの事件にかかわっているか明らかで悩む必要がない。
さすがに人気キャラクターの選考会などをめぐって隠された真相があばかれたりもして、オチもふくめて欲望にまみれた男たちの愚かしさと、復讐のむなしさをつきつけるドラマとして終わったが、完全に毒ガス製造サスペンスとは断絶している。
複雑なようで理解しやすいアクションサスペンスとしては優秀なので、もっと映像を充実させてアクションエンタメにてっしたほうが良かった気がする。このドラマの予算では難しいとは思うが。
あるいは、毒ガス製造プロットは削ってドラマのテーマを明確化しても良かったのではないだろうか。誘拐犯が無駄に重い罪をせおってドラマが分散することをさけられるだろうし、個人的な動機と事件の派手さが乖離することもない。