法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

バイデン勝利を悲しんだ自称貧窮の日本人は、新大統領が富裕層に増税する動きを今どう思っているのだろう?

米大統領選が決着した2020年11月に、とある匿名記事がバイデン勝利を悲しんでいた。自身はトランプ支持ではないと主張しつつ。
日本人としてバイデン勝利を悲しむ

アメリカという国のありとあらゆるインテリや金持ちやエスタブリッシュメントがバイデンについた。

彼等はトランプを支持するような粗野で垢ぬけず育ちが悪く学歴の低い田舎者をまとめて卑しむ。

私は日本の貧しい田舎町から抜け出してなんとか今は年収600万程の仕事をしている。結婚はあきらめた。

重要なのが「バイデンはそんなことしない」という反論はひとつもないことだ。

私とこの人達はトランプ支持者になるような層に対する憎悪の有無の差しかなく、現実に対する認識は一致してる。

当時のエントリで書いたように、出口調査からは「ありとあらゆるインテリや金持ちやエスタブリッシュメント」がバイデンを支持したとはいえなかった。
米国大統領選を世帯収入で見ると、ドナルド・トランプ氏の支持が過半数を超えたのは10万ドル以上だけ - 法華狼の日記

非大卒者は両者の支持が49%と拮抗している。人種ごとに見ると白人大卒者は両者の支持が49%と拮抗し、白人非大卒者は64%がトランプ支持で、非白人はどちらも70%以上がバイデン支持。どちらにしても非インテリや低学歴者がこぞってトランプ支持にまわっているようには見えない。

世帯収入でいうと、有権者35%の5万ドル未満で57%がバイデン支持、38%の5万ドル以上10万ドル未満が56%バイデン支持、28%の10万ドル以上が54%トランプ支持という結果になっている。

匿名記事は現実の認識が根幹から誤っている。米大統領選の選択動機は、人種や性別といった区分が大きい。


そもそも匿名記事を書いた人物が日本在住の日本人であれば、米国における白人と同じようなマジョリティだ。選挙へのアクセス権をもちつづけてきた立場だ。

40前後になると同窓生がかなり死にだす。二十歳前後で既に死んだ組とは別のインパクトがある。

その世代で約600万円という年収は平均値よりも高い。男性だけなら少し低いが、女性と比べれば圧倒的だ。
1. 平均給与|国税庁

f:id:hokke-ookami:20210204230520p:plain

さらに収入は平均よりも中央値が低くなる傾向にあり、匿名記事の筆者がかかえている不遇感は突出したものではない。
もちろん、そのくらいの収入では安定した世帯はもてないし、再分配の対象になるべきだろう。


そこで政策をくらべると、トランプ大統領が富裕層を減税した一方、バイデン候補が富裕層への増税をねらっていると2020年10月にも報じられていた。
CNN.co.jp : バイデン氏が掲げる税制案、知っておくべきこと

連邦税の最高税率は37%から39.6%に引き上げる方針で、これはトランプ政権前と同水準。実現すれば課税所得が40万ドルを超える人々に影響が及ぶ。

引用が前後するが、法人への増税で賃金がさがって労働者の負担になる可能性はあるものの*1、全体として高所得者の富が低所得者へ再分配されると見こまれている。

バイデン氏は年収が40万ドルに満たない人(納税者の9割以上が該当)には増税しないと約束している。直接税のみについて考慮する場合、複数の経済モデルはそれが事実に反しないことを示している。

ペンシルベニア大学ウォートン校のモデルは、高所得者の負担が非常に重くなることを示している。年収40万ドル以下の人の税引き後所得が平均で0.9%下がる見通しなのに対して、これを超える人の低下率は同17.7%となっている。

バイデン氏はまた、40万ドル以上の収入を社会保障給与税の課税対象にするとしている。現行の制度では、課税対象となる収入は13万7700ドルを上限とする。

そして2021年1月に入り、富裕層を標的にしたバイデン新大統領の増税計画が実行される可能性が高まった。民主党が上院下院ともに多数派になったおかげだ。
バイデン増税計画に弾み、法人と富裕層標的 - WSJ
もし匿名記事の筆者が米国人で、同じように平均より少し高いくらいの年収であれば、バイデン大統領の政策によっていくばくかは救われる立場になるはずだ。
それは米国で中間層にあたる白人の立場でも変わらない。それなのにバイデン勝利を望まないのであれば、貧しさとは別の理由がうかがえる。


ここで匿名記事へのはてなブックマークを確認すると最初にブックマークしているid:memorystock氏が、おそらく筆者だろうと推測できる。
[B! 増田] 日本人としてバイデン勝利を悲しむ

test

2020/11/08

このコメントに自身でつけているはてなブックマークのコメントから見ても、ほぼ確定と考えていいだろう。
[B!] test - memorystock のブックマーク / はてなブックマーク

今回はもう自分でもどうかと思うほど雑だがこんなにヒットしてるので我ながら柳の枝力の高さを感じる。40代で死んでいくってなんやねん。カリートの道みたいな気分だったのか(あっちは40代で全部死ぬ感じだが)。

2020/11/10

そこで米大統領選についてのコメントを見ると、開票当初の見かけの接戦*2を信じ、トランプ支持を過大視するものがあった。現実には世論調査どおりにバイデン圧勝だったのだが。
[B! 選挙] 米世論調査また不正確 「隠れトランプ支持」接戦の背景 (写真=AP) :日本経済新聞

自分の支持政党いうだけで不利益があると感じてる有権者がどんだけ多いのかって話で、これが人類の限界。
2020/11/04

さらに他のコメントを見ていくと、米大統領選にかぎらず現状認識や倫理観に多くの問題をかかえていることがうかがえる。
[B! 韓国] ブレーキなき文在寅政権(西日本新聞) - Yahoo!ニュース

もはや一方的に国際法違反や合意破りやヘイトムーブメント仕掛けられてるだけなんだが「どっちもどっち」にしようと頑張るよねコリアン国士様

2021/01/17

弱者が声をあげて少しでも不平等を解消する動きを、まるで不当な差別であるかのように評している。なるほどバイデン勝利を悲しむわけだ。
「黒人や女性や先住民は公認された弱者だからそりゃ無視されないよね」というが、そうした弱者を社会の多数派として抑圧する立場でいつづけることを望む白人と変わらない。
特別論説委員の小出浩樹氏による元記事からして、慰安所の日常生活について「週末の映画観賞」の記述ひとつが進んだ客観的な研究のように引いている。それこそ社会で苦しんでいる貧しい弱者から見れば、息抜きひとつで労働問題を否認するかのような噴飯物の文章でしかない*3
ここでのmemorystock氏は、「法」や「合意」がしばしば権力者や多数派の都合で作られるものだという視点すらない。河野談話の末尾を日本政府が形式的にも守らない現状を無視しているし、より大きな国際的な枠組みでくりかえし日韓合意が批判されてきたこと*4も無視している。
さらにmemorystock氏が、実際の作品にふれず匿名記事だけで価値を否定する人物ということもわかった。見ない立場からの作品票が許される場合もあると思うが、『銀河英雄伝説』のリメイクアニメへの反応と見くらべると味わいがある。
[B! 増田] 今週のプリキュアでヘテロババアが公式で否定されたの面白すぎる

このまとめだけ読んで言うなら、わざわざ作る価値もない貧しいお話だなあ。「こいつは許せない奴なので許さない」なんて話が子供の頭や性格を良くすることはない。事態を自分でコントロールする事も出来てないよね。
2021/02/01

[B! twitter] Shotaro TSUDA on Twitter: "銀河英雄伝説のリメイク。3期以降も続くのかな。もしそうなら、男女役割分業の描き方は変更せざるをえない気がする。旧アニメのままだと、さすがに時代にそぐわない。作品として大変に面白いのは踏まえたうえで。…なんてことを書いたら炎上するかな。"

cha9 ガジェット描写は趣味の問題だからです。SF作中でfaxを使い続けたとしても自由です。一方ポリコレ案件は善悪のジャッジメントであり従わぬ者に不利益を予告し強制します。 何回とぼけて同じ話繰り返すんですかね。

2020/09/14

トランプ支持者やバイデン反発者が望んでいるのは、自身をふくめて弱者が救われることではない。弱者たる自分が、せめてより弱い者より優位に立ちつづけることなのだ。救われない話だ。

*1:法人税を相対的にでも下げれば経営者が賃金を充分に上げるかというと、逆に疑わしいものを感じないではないが、米国現地の研究をここでは信用する。

*2:選挙前から予測されていて「赤い蜃気楼」と名づけられていた。その見かけの接戦をトランプ大統領は自己の正当性の喧伝にも利用した。米大統領選で開票が終わるまで確定していないと主張する人は、最も早い勝利宣言を記憶していないのだろうか? - 法華狼の日記

*3:さらに「日本帝国に誘拐や強制移動させられ、慰安所で暴力、拷問、性的暴行を受けた」という原告の主張を、あたかも吉田清治証言に影響されていると考えている。日本軍慰安所制度について日本の歴史学の見解をふまえることすらできていない。「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 – 日本史研究会

*4:国連の強制的失踪委員会が、従軍慰安婦問題で日本に対して遺憾の意 - 法華狼の日記