法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』

インドの実業家によって大々的な開園にこぎつけた恐竜クローン鑑賞テーマパークが、多くの犠牲者を出してから3年後。
そのテーマパークが廃墟化した島で火山活動がはじまり、さまざまな思惑で恐竜救出作戦が展開されたが……


ジュラシック・パーク』にはじまるシリーズ第5作として2018年に公開された米国映画。レジェンダリーピクチャーズ製作作品*1
映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』公式サイト
金曜ロードショーの地上波初放映で視聴。腕が食いちぎられたり犬や人間が食べられる場面が、スプラッターにならないギリギリでTVで流れた。
金曜ロードシネマクラブ|日本テレビ


全体としては予告でうけた先入観と違って、意外とスケールの小さな作品だった。
陰謀で主人公がとりのこされて島を逃げ回るばかりの前半は『ジュラシック・パークIII』と大差ないし、後半のロックウッド屋敷で恐竜が暴走する展開もセットこそ広いが箱庭のようだ*2
もちろん大作アクション映画らしくVFXが大規模に多用されているが、恐竜とともに前半の危機を生みだす火山は麻酔銃を撃たれた人間でも逃げ出せるくらい遅いし無人島の範囲におさまる。後半もふくめて一部富裕層の陰謀によって事態が水面下で進行していくため、シリーズ恒例だったコントロールを外れて暴走する恐怖もない。敵も味方も個人的な動機で安易に行動して*3、新たな危機を呼びこんだり解決したりして、ご都合主義も目につく。
ただスケールが小さいおかげで、現代のハリウッド大作のわりに大味でなく、無駄なキャラクターがいないという良さもある。ロックウッド屋敷内の逃走劇は位置関係が明快で、人間が普通に生活している空間を恐竜が破壊していく描写も楽しい。


あくまで人間がクローンで再現して改造した生物なのに、絶滅動物として保護するか見捨てるかという序盤の争点は首をかしげたが、最終的に納得できる判断がされた後、つくられた命というテーマにそって理解できる選択がされたのも良かった。
少女がクローンだということは見ていて予想はできたが、ちゃんとドラマとして組みこんだクライマックスになることは期待していなかった。シリーズ全体にさかのぼってドラマの深みが出てくる、良い落としどころだったと思う。

*1:中国資本が入って中国人俳優が無意味に優遇されていると評されているレジェンダリー・ピクチャーズだが、初代から登場していた中国系アメリカ人の演じる学者は欲深くクローン恐竜をつくった報いをついに受けた。

*2:ジャンルは異なるが韓国映画『ベルリンファイル』の建物脱出シークエンスを連想した。 『ベルリンファイル』 - 法華狼の日記

*3:少女が自室の布団にくるまる場面は、前半ならともかく逃げ回った果てのクライマックスでは違和感があった。