法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』

恐竜のママから卵が生まれたという手紙をうけとり、ゾロリとイシシとノシシは孵化にたちあうことに。
研究者チームが島から去ったと知って一安心したゾロリ一行だが、島に接近した嵐によって卵が海に流される……


ポプラ社の児童向けシリーズの、アニメ映画化3作目。2014年に公開され、以前に無料ネット配信もされた作品が、NHK教育で放映された。
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TVシリーズでも良い仕事をしていた岩崎知子監督に、もりたけし脚本のタッグで、この作品に求めるものは見られた満足感があった。


まず、卵を守りながら島へ戻すという目標がはっきりしているので、どのような障害がふりかかっても舞台が変わってもストーリーがぶれない。
アニメオリジナルキャラクターとして呉越同舟する女性研究者ディナとは、恐竜の情報を与えず卵を守るよう協力させる難しさで緊張感がつづく。たがいの足りない知識を伝えあうことで説明台詞も自然になる。
終盤で卵をねらってくる第三の勢力も唐突に感じない。舞台におりまぜて前振り描写を入れつつ、家族愛というテーマにそっているからだ。


何より、薄汚い女性研究者と美少女お嬢様が同一人物というラブコメ設定を、恐竜に愛着をもつことで自立した女性として描きったことに感心した。
ゾロリは少しずつ距離を縮めながらディナの正体を知り、いつものようにお嫁さんにしようと考えはじめる。しかしディナはゾロリを発明家として見直しつつも、最後まで恋愛感情はもたない。
恐竜の知識から好奇心をもち、世界を知るために自立して歩むことの素晴らしさ。それを幼い観客に伝えるために、異性のパートナーは必要条件ではないことを示したわけだ。
ちなみに原作からある恐竜一家の設定でも怪獣が養子に入っていたり、けっこう多様な家族像を描いている。おかげで説教が押しつけがましくならない。


もちろん子供向けなりに映像面も充実している。ゾロリが発明するさまざまなメカに、理科的な知識を反映した火山の行程*1。巨大感ある恐竜も、奔放なディナも、その芝居を見ているだけで楽しい。
特に目を引いた作画は、クジラがタコをふりほどく俯瞰の魚眼レンズの背景動画だ。火山関係もところどころ面白い作画があって、時間いっぱい楽しめた。

*1:ゾロリ一行は海への脱出のために下山して川を下るという、現実のサバイバルには問題のある行動をとる。しかし川が必ずしも海につながらないことを描いたりして、全体を見ればフォローはできている。