漫画家の赤松健氏*1が自身のロビー活動を報告したツイートに対して、「墨東公安委員会@bokukoui」氏が異議をとなえていた。
いま大量にRTしたように、赤松健氏のこの「提言」はまったく頓珍漢です。世界で売るなら世界に合わせないといけないのに、ガラパゴスを正当化している。のみならず、権力を出版ビジネスに介入させようとしている、自由な表現を権力に売るものでは?https://t.co/zSNbQiUNughttps://t.co/5OegL44IVg
— 墨東公安委員会 (@bokukoui) 2020年7月4日赤松氏たちがやろうとしていることは、いわばコンテンツを「統制」する地位を得ることで利益を上げようというものではないでしょうか。「JASRACみたい」というこちらのご指摘にありますが、私の脳裏に浮かんだのは「国営のハラグーロ(げんしけん)」でした。https://t.co/zUWlbe0Ppv
— 墨東公安委員会 (@bokukoui) 2020年7月4日
ただ少し違う「ガラパゴス」の話として、電子配信書籍が紙媒体より性や暴力にまつわる描写が厳しく規制されているのもよく見る。
それはスマートフォン向けのアプリで漫画配信する時、その厳しい制限にあわせなければならないことが一因だと聞く。
赤松氏が立ちあげた漫画配信プラットフォームも、2015年8月に「マンガ図書館Z」へリニューアルした時、成人向け作品が有料会員限定になった。
赤松健さんが語る「マンガ図書館Z」の狙い 「あらゆる作家が潤い、海賊版が絶滅する世界を」 (1/2) - ITmedia NEWS
月額300円(税別)の「プレミアム会員」は、広告表示なしで作品を読むことができるほか、電子透かし入りPDFを毎月1冊ダウンロード、成人向け作品の閲覧、本棚への登録冊数を5000冊に拡大(無料会員は7冊)──という特典を提供する。
同時期にスマートフォン向けアプリでの配信もはじめられたが、そのandroidアプリが一時配信停止になったことと成人向け有料化が関連していると推測されたりもしていた。
つまり赤松氏が「外資系プラットフォームが寡占化する中で」「日本作品が海外の基準で規制される事態は避けたい」とツイートしていたのは、むしろ日本がそう規制されている現状を念頭においた発言ではないか。
今月、参議院の参考人質問に呼ばれましたが、国会議員から「日本の漫画が世界で生き残るにはどのような方策が必要か?」という質問がありました。私からは、「まずは何と言っても表現の自由。日本は諸外国に比べて自由な創作ができるのが強み。ただ外資系プラットフォームが寡占化する中で、→
— 赤松 健 (@KenAkamatsu) 2020年6月29日→日本作品が海外の基準で規制される事態は避けたい。」と申し上げました。
— 赤松 健 (@KenAkamatsu) 2020年6月29日
また「今回見送られたナショナルMANGAセンターで、生原稿の保管・展示・マネタイズを行い、海外流出も防ぐ。」「これらができれば、日本漫画は今後10年は盤石。」とも。議員の先生方も、大きくうなづいておりました。
もしも、もともと「ガラパゴス」という表現が指していた日本の携帯電話市場が、外国のスマートフォンに押されることなく独自に存在しつづけていたならば……今の電子配信漫画の規制状況は相当に違っていたのではないか。
もちろん日本国内ではまた別の自主的な規制があるだろうが*2、選択肢が多くとれるだけでも作品の自由度は増すだろう。
*1:はてなアカウントはid:KenAkamatsu。
*2:配信作品が規制によって安易にとりさげられ、物理媒体の信頼性が増した事例はいくつかおぼえがある。キルミーは関係ないし、ダンディはもっと関係ない、いいね? - 法華狼の日記