マッドハウスにつづいてSTUDIO4℃の制作進行もブラック企業ユニオンに加入したとの情報 - 法華狼の日記
一点だけ救いがあるとすれば、先に戦おうとした人物がいて、きちんと報道されたことが、今回の動きにつながったこと。
上記エントリの続報になるが、会社員個人としては完全勝利でありつつも、業界全体を改善しようとする動きははばまれたという、悩ましい決着になってしまった。
アニメ制作会社の「未払い残業代」、突然の振り込みで「裁判終了」へ…原告男性、裁量労働制めぐる判決とれず「複雑な気持ち」 - 弁護士ドットコム
会社側から、第2回口頭弁論(2020年1月30日)で、反論とともに和解の申し出があったが、その後の弁論準備期日で「和解はむずかしい」となり、判決に向けて裁判をすすめることになっていた。
ところが、会社側は6月8日、一切の事前連絡なく、突然、男性の銀行口座に残業代286万7375円全額と遅延損害金を振り込んだという。
男性は6月23日、東京・霞が関の厚労省クラブで会見を開いて「完全勝訴といっていいが、裁量労働制の判決をとることを旗印にしていた。非常に複雑な気持ちだ。自分の裁判は終わったが、アニメ業界の問題は何一つ改善されていない」と話した。
一応、裁判にうったえれば会社が折れる前例になったとはいえるが、そのためには個人が訴訟しやすくなる社会の助けが重要になる。
今回は社員がユニオンに入ったことにくわえて、クラウドファンディングで費用を捻出することができた。前者は今後に発展していくことを期待できるが、後者は常に期待できるとは限らないし期待するべきではないだろう。
また、会社側は弁護士ドットコムの取材に対しては、訴訟を起こされたこともあって労働環境の改善をすすめたと回答している。
労働基準監督署からの是正勧告についてはすでに改善報告済みです。数年前から労働環境の改善を進めておりましたが、社員からの提訴を受けたことでさらなる労働関係のあり方等の見直しの契機として真摯に受け止め、すでに就業規則の改定等行い、新たな勤怠管理システムを導入しました。労働条件通知書が全員に再交付されております。
その意味で今回の訴訟が会社を少しでも変えることにつながったと思いたいが、ユニオンの報告によれば会社の抵抗は往生際が悪かった印象がある。
1年前の6/25、三鷹労基署はアニメ制作会社STUDIO4℃に残業代未払いの是正勧告を出し、11/22には裁量労働制の適用否定を改めて判断した。それでも団体交渉と裁判で追い詰めるまで、会社は今月まで残業代を払わなかった。裁量労働制を悪用する企業に対する労基署の無力さ。労働者が声を上げなければ。 pic.twitter.com/Cso3DZxLog
— 坂倉昇平@総合サポートユニオン/NPO法人POSSE (@magazine_posse) 2020年6月23日
そうした会社の抵抗と抑圧は、ひとつの悪徳会社にとどまらないようだ。何しろ「社長を守る会」なる団体が会社側についていたというのだから。
なおSTUDIO4℃は団体交渉で、「社長を守る会」という団体の行政書士が進行を妨害し、ASCOPEという事務所の弁護士が代理人でした。彼らの団体交渉拒否の顛末が、何の守秘義務もない一方的な全額支払いに終わった事実は、ぜひ多くの社長に知られてほしい。ちゃんと団体交渉に応じればよかったのに。
— 坂倉昇平@総合サポートユニオン/NPO法人POSSE (@magazine_posse) 2020年6月23日
実は2012年の時点でid:washburn1975氏がエントリで批判して注目を集めていたのだが、まさか活動を継続して有名な会社にかかわってくるとは思わなかった。
ブラック士業絶好調 - 男の魂に火をつけろ! ~はてブロ地獄変~