新型コロナウイルスへの対応で医療現場が疲弊しているとの報道に対して、先に自衛隊員の酷使環境が黙殺されているという不思議な反応が複数あった。
[B! COVID-19] 「病院辞めたい」「勤務中に泣き出す人も」 医療現場が悲鳴 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
b:id:aa_R_waiwai 自衛隊は毎年、災害や鳥インフルで地獄を見た。だけど、この国では現役隊員が政治に文句つけると怒られるんだよね。軍国主義だケンポーイハンだって。民間人は他人事。そのツケが民間人にやってきた。割と愉快。
b:id:REV 自衛隊が酷使された時，私は不安に駆られたが，自分は自衛員ではなかったので，何の行動も起こさなかった。その次，官僚が酷使されたとき、自分は公務員ではないので，何の抗議もしなかった。次に医療従事者が
医療従事者の苦難を「愉快」と表現することは信じがたいが、賛意のつもりかb:id:k-takahashi氏とb:id:frothmouth氏*1がはてなスターをつけたりもしている。
しかしaa_R_waiwai氏は、非正規社員など民間人が酷使されてきた社会問題を無視しているし、酷使批判と政治批判を適切に峻別しているとも思えない。
たとえば日本共産党などは、自衛隊を憲法違反と指摘したり、その活動を批判しつつ、自衛隊員が厳しい環境におかれることも同時に批判する*2。
企業が労働基準法に違反していると批判することは、その企業につとめる労働者の人権を守ることにつながる。しかし経営者は、しばしば企業への批判を労働者への非難とすりかえる。
同じような問題として、太平洋戦争において日本軍がおこなった自爆攻撃作戦を批判すると、それが特攻隊員への誹謗中傷であるかのようにすりかえられる。
末端を矢面に立たせた責任者が、その責任を追及された時にふたたび末端を矢面に立たせるという、二重に卑劣なふるまいだ。
アニメやゲームといったジャンルでは、会社が批判された時に責任者ではなく声優に謝らせることを、「人間の盾」になぞらえて「声優の盾」と呼ぶという。
当事者の説明不足が原因？ 炎上を引き起こしかねない「声優の盾」とは - ねとらぼ
アニメに関係する会社や制作者などが不祥事や何らかのネガティブな問題を引き起こした際、当事者ではなく声優に謝罪などをさせることを指します。
当事者がきちんとした説明を行わない状況でネガティブな情報を発信し、作品に参加しただけの声優が謝ることは、ユーザー側としては説明責任を果たしていないと考え、余計に反発し炎上が収まらない悪循環に陥ります。
こうした現場を盾にする論法は、本当に社会にありふれている。だから誰が対象であっても他人事ではないし、見逃さないよう気をくばりたい。
*1:自身でも「国も遅いし企業も遅い、国民は脳停止している」と「国民」全体を非難するコメントをするような人物なので、悪い意味ながら一貫性はあるとはいえるが。[B! 医療] マスク・防護服…医療装備が不足 企業、増産ためらう :日本経済新聞
*2:今年に入っても、中東派兵について「地域の軍事的緊張を高めるばかりか、自衛隊員を危険にさらすことは明白だ」と穀田恵二氏が国会で主張した。論戦ハイライト/中東派兵 危険明白/一触即発状態 自衛隊撤収を/衆院予算委 穀田議員
