一般論として、異なる文化をとりあげるメディアのまなざしには気をつけるべきとはいえる。
反論が来ないからと揶揄したり、賞賛するかたちで未開なものと見下したり、美化した評価を押しつけたり。
そうした問題があると指摘されているのがBS-TBSの『外国人記者は見た!日本inザ・ワールド』という番組。
外国人記者は見た+日本inザ・ワールド
具体的に批判されているのは第35回の「“HENTAI国家”ニッポン」というテーマ。
HENTAI国家ニッポン
街に「ポルノ」が溢れてる!?
「JKブランド」が商売になるのは日本だけ!?
外国人記者が見る“HENTAIの国・ニッポン”
まず私は視聴していないので、番組そのものは評価できる立場にない。
ゆえに擁護はできないし、公式サイトを読めば批判したくなる内容だろうという予想はできる。
ただ、これを批判しているCatNewsAgency氏のTogetterが信用できるかというかというと、それも難しい。
まとめよう、あつまろう - Togetter
前半では自分のツイートばかりまとめている。その冒頭のツイートからして、何を批判したいのかわからない。
ジェイク・エーデルスタイン記者に対して、同様のツイートをくりかえしまとめている。
しかし産業の問題を批判することと、産業の従事者と仲良くすることは何ら矛盾しない。
伊藤和子弁護士はAV女優の人権を守るために活動している。問題のジェイク記者が伊藤和子弁護士と協力しているなら、AV女優と友好的な関係をもつことに不思議はない。
逆にCatNewsAgency氏は「AV出演強要事件のカラクリ」として、下記のようなTogetterをまとめて、被害告発者の個人情報を拡散させようとするような人物だ。
AV出演強要事件のカラクリ - Togetter
「女性被害者」の「言い訳」を盾に着々とAV業界を包囲する人権屋弁護士。一方、事件の裏側を切々と訴える現役AV女優。彼女を罵る声。状況が慰安婦問題と極似してきましたね。
たしかに従軍慰安婦問題と似ている。CatNewsAgency氏のような主張で擁護しているつもりになっている人物が出てくるという点において。
ジェイク記者に対する「マッチポンプ」という批判も、ツイートの説明では成立しない。もともと問題にとりくんでいるなら登板することそのものは自然だ。
「HENTAI」という言葉の認識も間違い。「waiwai」は毎日新聞発行の英語メディアそのものではなく、内容の正確さを保証しないと断っていたコラムだ*1。
そのコラムのメタタグに「hentai」が使われていたことが批判においてほりおこされたのであり、コラムそのものが「HENTAI」という言葉を流布したわけではない。
少なくともメタタグの性質から、当時すでに知られた言葉だったことは明らかだ。拡散に寄与した責任は問えるだろうが。
具体的に番組内容にふれたものについても、女子学生が番組の街頭インタビューに答えて噂を語った場面について、根拠を出さずに「ヤラセ」と断言したりする。
一方、メイドカフェの写真を公式サイトでイメージ的に使っていた問題は、公式にとりさげられたらしい。これは批判として一定の妥当性があったのだろう。
ただしこの問題はCatNewsAgency氏の「検証」以前に、指摘するツイートが複数まとめられている。残念ながらCatNewsAgency氏自身のツイートの信頼性はあがらない。
しかもCatNewsAgency氏独自の、セックスカルチャーをとりあげた番組であるというジェイク記者の説明は、それ自体には問題があるとはいえまい。
はてなブックマークでは「スルー」することへの批判があるが、そもそもBSの番組では話題になりでもしないかぎり、気づかれることは少なかろう*2。
http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/988137
id:technocutzero はてなではこういう存在はスルーされる
id:Hige2323 反ヘイト連中は日本が対象だと案の定だんまりだな
id:tikuwa_ore TBS、マジでゴミすぎんだろ。今すぐにでも停波して欲しいわ。/そして、安定のはてサスルー案件。
id:ryohei_wn togetterは極右が、はてブは極左が支持を集めやすい。だからといって、こういった指摘を発言者で判断しないようにしたい。
そして番組を批判するにしても、できればCatNewsAgency氏のTogetterは避けるべきとしか思えない。
どのような人間でも妥当な見解を出せることはあるし、偏見をもつからこそ貴重な意見を提示できることもあるが*3、今回のCatNewsAgency氏はそのどちらでもない。
*1:毎日新聞英字サイトコラムWaiWaiが断り書きをしていた件について少し - 法華狼の日記
*2:自己申告になるが、私自身はid:wideangle氏のはてなブックマークを見ていて存在に気づいた。「スルー」を批判するコメントが複数ついた後のブックマークなので、それ以前に反応することはできない。
*3:『外国人記者は見た!日本inザ・ワールド』も、番組概要で「もう一つの目線」の提示をかかげており、その目線を絶対視するような文章にはなっていない。