法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』なんでもエーアイアイ/役立つもの販売機

サッカー予選番組にあわせて、ドラ顔ジャンケンにサッカー解説者が参加し、本編終了後にサッカー選手の意気込みと『ドラえもん』の名台詞をかさねたプロモーションが流れた。
それとは別に、EDが今年の映画の主題歌PVにさしかえ。どれも出来は悪くないが、あまり正月気分はなかったかな。


「なんでもエーアイアイ」は、ぐうたら生活をしたいのび太に求められ、ドラえもんが手助けするロボットを出してやる。しかしそのロボットは物事を最初に学習させる必要があって……
伊藤公志脚本のアニメオリジナルストーリー。ひさしぶりの鳥羽明子コンテ*1で、ほとんど表情のない「エーアイアイ」の活躍を破滅を予感させるように演出した。
シンプルなダジャレネーミングに、猿っぽさとチンプイっぽさがある「エーアイアイ」のデザインは、ちゃんと藤子Fらしさがある。真っ黒な顔面に目が光るだけという無機質さが、奇妙な不穏感をただよわせていて印象的。
「なんでもエーアイアイ」「役立つもの販売機」|ドラえもん|テレビ朝日

https://www.tv-asahi.co.jp/doraemon_2017/story/0585/images/3hg99tyDks.jpg

のび太の言動もかなり原作らしい。足で物をとるため身長をのばしたいと願う冒頭から、意外と手間のかかる学習にのめりこむ中盤、少しずつドラえもんを邪険にしていく後半、さらに予想外にエーアイアイの限界を露呈*2させる結末まで、見ていて違和感がなかった。それでいて新鮮味がないことはなく、局面ごとに違う性格を見せていくので飽きさせない。
あと、ぐうたら生活は正月と直接の関係はないが、秘密道具がティッシュの指示を誤解して百人一首をもってきた場面に感心。誤解させた指示が自然で納得感ありつつ、季節ネタと感じさせ、なおかつダジャレネタというトリプルミーニング。


「役立つもの販売機」は、十円玉を入れると何か役立つものが出てくる秘密道具が登場。それで出てきたガラクタに首をかしげながら、ドラえもんたちは街へくりだすが……
原作者生前の単行本には未収録な作品を、佐藤大脚本でリニューアル後の初アニメ化。コンテの新井宣圭は作品初参加で、もともとシンエイ動画作品で制作進行していたが、MAPPA作品の演出でよく見る名前。
便箋をむだづかいする発端の紙飛行機は作画もていねいで感心したし、中盤ではゴミバケツに隠れたあたりの視点演出は良かったが、とにかくストーリーがつまらなくて刺激もないのが残念だった。もともと未収録になるくらい完成度の低い話ではあるのだが……
なんといっても、あらかじめ起きる危機を予測して道具を出すというコンセプトが、よりによって直前の「エーアイアイ」と丸かぶりしているのが良くなかった。もともと原作でも完全な危機回避ではなく、かなり予言の自己成就的なマッチポンプなので、「エーアイアイ」と比べて役立たず感がひどい。さらにアニメオリジナル描写の危機回避に納得感がないため、アイテムが意外なつかわれかたをしてもカタルシスがない。
ただ、十円玉で学校の先生が出てきたり、十円玉を回収すると販売機に先生がもどったりという原作どおりのシュールな描写は楽しかった。アイテムの意外なつかいかたよりも、販売機から出そうにないアイテムが出てくる驚きを重視してアレンジするべきだったと思う。

*1:ドラえもん』では2017年にコンテを少し切っただけ。同名の人物が『千と千尋の神隠し』に動画としてクレジットされているが、スタジオジブリ出身なのだろうか。

*2:不可能性を学習していなければ試行してしまう問題は、同じロボットでもドラえもんならば起きないことだ。