アニメオリジナルの前半と、原作通りの後半と。ドラえもん誕生日SPの映像も少し公開。
「額縁をくぐって海へ」は、夏休みにどこにも行けないのび太が、いろいろな風景を楽しむ秘密道具をこじあけて、友人とともに海へ行く。しかしのび太は海を楽しむこともできず……
アニメオリジナル秘密道具によるオリジナルストーリーだが、道具の機能も前半までの展開も既視感がぬぐえない。原作の雰囲気が尊重されているというより、工夫が足りないように見える。そもそも秘密道具「実景ひきよせ額縁」が「どこでもドア」の下位互換でしかないのに、劇中でフォローする描写がない。
ただ、のび太が急いでトイレのために家へ帰り、廊下が砂と水で汚れる描写あたりから雰囲気が変わってくる。くりかえし流れるさお竹の売りこみで気分が壊される中、いつものように秘密道具が野比母の手で移動させられ帰れなくなる。そこから潮が満ちて島がなくなり、空中に浮かぶ額縁へ必死のサバイバルが展開。そこからさお竹をのばしてもらって助かるという見事な伏線の回収。
やはり既存の秘密道具でも同じストーリーが作れそうな気はするが、尻上がりに物語が収束していったので、最終的にはけっこう良いという感想になった。
「チューケンパー」は、役立つ友人を欲するのび太のため、忠実なロボット犬をドラえもんが出す。のび太は最初こそ喜んでいたが、おせっかいぶりにすぐ困るようになり……
2009年に中編に拡大してアニメ化*1した短編を、より原作に忠実なかたちでリメイク……のはずだが、いろいろな意味でブラックな原作からは今回もアレンジされている。
今回のアニメではその場から逃げだしたくて、海上の小岩まで連れて行かれるオチ*2。それが原作では、死にたいと口にしたのび太のために、首吊り用の縄を持ってくるのがオチなのだ。原作者生前の単行本に未収録なのもむべなるかな。
しかし自殺ネタがなくなっただけ物語が薄くなったというわけでもない。のび太が必死にチューケンパーから逃げて、その先々でチューケンパーがあらわれるホラー演出を足したり、それが第三者には愛らしい忠犬の姿に見える描写を入れたりして、のび太の孤立を強調していた。
いかにも今井一暁コンテらしく作画がこっていて、イメージシーンの静止画でTVアニメのドラえもんには珍しく描線を太く、タッチをつけていたりする。いろいろな制限のなかで、補うように原作の芯を守った映像化として、なかなか検討していた。
*2:同じ放映日の前半と舞台が共通しているのは意図的だろうか?