法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第29話 ただいまルン☆惑星サマーンのユウウツ

ようやく羽衣ララの故郷に到着。そこで家族を紹介され、何もかもAIに判断させる惑星サマーンの文化を知る。


冒頭の強弱がついた描線から上野ケン作画監督回とわかりやすい。羽衣をめぐる本筋が動いているので、良くも悪くも映像の良さと話の面白味は独立しているが。
まず、メインのプリキュアが初期から3人以上いる作品で、ちゃんと初期メンバーの来歴や目的をふりかえろうとする展開そのものに感心した。どうしても玩具展開が優先されて、中盤以降は新プリキュアが優遇されがちなシリーズで、ここまで連続ストーリーで発端の設定を固めなおすのは難しいものだ。
意外だったのは、いかにもディストピア的な効率優先社会を、星奈たちがいっさい否定するそぶりを見せなかったこと。惑星サマーンの制度に対して小さな抵抗をおこなったのは、住人である羽衣ララ個人の選択。異文化の尊重というものを物語のパターンで処理せず、覚悟をもってやりきろうとする姿勢を感じた。
実際、惑星サマーンはディストピア的であり、他者の選択や幸福を決めつけがちだが、他者への加害は避けており、強く感情を抑圧しているわけでもない。環境負荷を下げる方向に文明が発達しているが、文化的な技術も発展させている。長所も短所もある社会だ。


もちろんプリキュアひとりひとりにスポットを当てなおすエピソードならば過去作でもやっているが、今作はメインとなるひとりと相似的であったり対照的であったりするプリキュアをからませることで、残りのメンバーが手持ちぶさたになることを避けている。
今回は羽衣と同じく家族がプリキュアを探り、どこか抑圧されている香久矢を対置。これで惑星連合と地球のプリキュアへの距離感の共通点と差異がわかりやすくなり、多くの意味で先輩な香久矢に影響されたように羽衣が決断する流れも美しい。