法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』未来世界の怪人/おはなしバッジ

「未来世界の怪人」は、いつものようにのび太をいじめていたジャイアンがミニチュアのような鞄をひろう。そしてのび太ドラえもんの秘密道具で反撃しに来た時、ジャイアンも対抗して……
 2009年に30分枠でアニメ化*1した初期原作をリメイク。今回の絵コンテは副監督もつとめるパクキョンスンだが、全体的に感心できなかった。
 冒頭で原作では省略されているジャイアンの暴力を描いたのはいいとして、ミニサイズの鞄をジャイアンが拾う伏線まで追加したのはやりすぎ。ドラえもんの秘密道具で圧倒的な優位に立っているはずののび太が反撃される導入の驚きを減じてしまっている。他の追加描写も全体的にジャイアンが秘密道具をどのように使用しているのかという情報や、途中で登場した男が怪しいという記号的な表情を足して、不条理な不穏感が薄れてしまっていた。
 コンテも全体的に説明的すぎる。ジャイアンが「くすぐりノミ」をふりかける描写も原作のアングルのほうがダイナミックだし、オチの全景も原作のレイアウトのほうが奥行きがある。一年くらい前までパクキョンスンコンテ回は良い構図が多かったのだが、副監督になってから作画の悪さにひきずられるように単調な絵作りが多くなった。


「おはなしバッジ」は、未来世界の孫の孫からのび太へプレゼントがとどく。絵本の世界を体験できる幼稚園児にはやっている秘密道具らしい。それをつけて主人公を体験してみるが……
 2012年にドラミの登場を追加するかたちで映像化*2した初期原作を再映像化。全体的に原作の良さをそのまま活かした映像化。子供向けながら楽しい活躍から切れ味鋭いオチまで忠実に楽しめる。
 しかしドラえもんが掘り出した「宝」が十円玉なところは労力にあってなさすぎるので、原作の初出からの物価上昇を考慮して五十円玉に改変しても良かったかも。初出の時代なら道端にあってもおかしくなかっただろう灰を入れた缶も、今回のアニメでは唐突な登場に違和感をおぼえた。もう少し自然に見せるため、冬の放送にして空き地の焚火痕を画面の片隅に映すとか、普通の灰ではなく石灰にアレンジするとか、もう少しやりようがあったのでは。ジャイアンの叔母がもってきた洋服の生地を映像でわかりやすくするため、包みをといてクローズアップしたアレンジのように。