母の日特別企画だそうだが、前半はあまりにも関係がない。むしろ色々な意味での料理をテーマにした日だという印象が強かった。
EDはドラえもんのうたのアレンジバージョンに変更。ドラえもんがとんでもない姿になっている場面のダイジェスト映像が楽しい。
「のび太のおいしい食べ方」は、ジャイアンのペットのムクが捨てられていたところから問題がはじまる。動物に命令しつつコミュニケーションできる秘密道具を出したところ、逃げたライオンに出くわして……
てんとう虫コミックスには原作者の生前は収録されず、藤子不二雄ランドに収録された短編「イイナリキャップ」のアニメ化。「腹ペコご主人さま」のサブタイトルで2007年にアニメ化ずみ。
さらに大山のぶ代時代にもアニメ化されているが、主人公が食べられかけるほど直球でカニバリズムを描いているのに凄い話ではある。人間と飼育の関係を感動的かつ教訓的に描いた話でもあるが。
物語は原作に忠実。動物園から逃げだしたライオンという藤子F作品のお約束をいったん否定して、さらに『注文の多い料理店』よろしくライオンがのび太自身に調味料を塗らせる展開が、ちゃんと結末の伏線になっている。特異な出自のライオンだからこそ、ムクに重ねあわせてみることができる。
ただ、ムクがジャイアンを助けるクライマックスが、アニメで描写量を多くした結果、驚きや高揚感が減じていたのは残念だった。原作と同じように、ジャイアンが襲われる瞬間にムクが画面外から飛びかかってくるくらいのテンポで映像化してほしい。
「お料理ワッペン」は、のび太と父親が、母の日だからとかわりに料理をすることを提案する。しかし母の不安は的中し、ふたりとも失敗続き。そこでドラえもんが秘密道具で料理をうまくしてあげる……
アニメオリジナル秘密道具でさまざまな料理をつくるばかりのシンプルな物語を、大杉宜弘コンテとメイン級の作画監督でていねいに映像化。芝居作画の動きがていねいで、食材も美しい色指定で、完成した料理も美味しそう。
番組公式サイトでレシピを公開していることから、きっとスタッフが取材して参考にしたのだろう。単純に引きうつしただけでなく、「塩振りおじさん」をパロディする余裕も見せる。
お料理ワッペン・オリジナルレシピ|ドラえもん|テレビ朝日
下手な料理アニメよりも素晴らしいアニメ料理を見せてくれただけで、充分に楽しかった。思えばシンエイ動画は『美味しんぼ』をアニメ化した制作会社でもあったか。
もう少し物語にひねりがあっても良かったが、こういうイベント回なら大過なくハッピーエンドで終わっても許せる。きちんと食事後に食器を洗って食卓を拭く描写も入れているし、それが一区切りの表現として物語のテンポをコントロールしていた。