法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第14話 笑顔 de パーティ!家族のソンリッサ☆

天宮家に招待された星奈たち。メキシコ出身の花屋の父と、通訳の母、にぎやかな兄弟たちが歓待する。しかしその輪から長男ひとりだけ外れていて……


山田由香脚本、入好さとるコンテ。作画監督は赤田信人とフランシス・カネダの共同だが、原画に板岡錦が入っていたりして、プリキュア個別回のわりに絵に力が入っている。特にアクションシーンで地面が立体的に割れる作画などが目を引いた。


物語の本筋は、自信たっぷりにふるまうメインキャラクターと同じ立場の少年が、自分が周囲と違うのではないかと悩むドラマ。
周囲との違いを指摘する友人の台詞が「すごい」というだけの表現で、明らかな低評価ではなく、皮肉な口調でもないところがいい。はっきり差別的な発言であれば批判すれば物語としては充分だし、それ以上の話をする必要はない。友人の評価が人種を指していることすら明確ではないからこそ、思春期にさしかかっているであろう少年のアイデンティティのドラマとして普遍性があるし、同時に異文化を異物と見なす社会の問題という視点ももりこめている。
また、日常生活で太陽とも評されるプリキュアのひとりを、メキシコ人と日本人のダブルに設定したところも、あらためて見識だと思う。日本において容貌や文化を賞賛されやすい「白人」ではなく、おそらく現在の北米で排外されようとしているヒスパニック。天宮家に限っても、たぶん貧困層ではないが、けして富裕層でもなさそうな描写がされている。
そんな天宮長男の悩みに、天宮えれなと同年代の香久矢まどかが真っ先に気づいていたり、さまざまな世界を旅した経験を羽衣が語ったり、星奈がパーティーコスプレを提案したりと、三者三様な向きあいかたをしていったのもキャラクタードラマとして楽しかった。


ただ、最終的に共同体の家族に長男が戻って終わるのは、ファミリーアニメの限界かな、と少し残念だった。
予定調和なので落胆するほどではないが、集団として動かずとも共同体に必要充分な居場所は用意されている、くらいの立場を少年に用意してあげてほしかった気分はある。パーティーに積極的に参加はしないが邪魔はせず、気分が向けば関わったりもする、くらいの自由はあっていい。