法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』化石大発見!/布団にのってふわふわり

「化石大発見!」は、エイプリルフールに宝の地図で騙されたのび太が、自分を邪魔者扱いした老人を騙そうとする。老人は化石の発掘作業を行っていたのだが……
少し早い季節ネタで、2006年にアニメ化された短編を再アニメ化。2016年にスポット参加*1した川越淳が2回目のコンテを切る。
何よりも近景と遠景に人物を配置して、奥行きを強調したカットが印象的。断崖の広さを印象づけつつ、騙し騙されるキャラクターの距離感を表現する。さらに背景美術もしっかりしていて、発掘作業する崖はそれらしい地層が浮かびあがっている。ただ食卓にのぼった魚が、腹の部分まで中骨があったのは、化石化して騙すためのリアリティを減じていて、少し残念。ちゃんと資料を見て、胸鰭あたりの骨格もしっかり作画してほしかった。
物語は古生物学的な興味を満たしつつ、嘘が真になっていくというもの。改めて映像で見ると、偽化石の何が大発見なのか老人がていねいに説明する台詞が、きちんと生物学をふまえていて、それがリアリティを確保するだけでなく古生物学の奥行きを感じさせる。広い知識を背景とした解釈がそれらしいから、騙された老人が愚かなのではなく、のび太たちがひどいのだということもよくわかる。
今回のアニメ化ではリアリティの勘所を外さず、のび太ドラえもんが2度目に騙す場面をアレンジ。悪ノリで嘘をひどくするのではなく、ここまで大袈裟にすれば気づいてもらえるだろうという甘い考えで後戻りできなくさせ、どれだけ老人にひどいことをしたのか実感させる前振りになっていた。


「布団にのってふわふわり」は、のび太が布団から出てこずに学校に遅刻しそうなので、布団を飛行させる秘密道具をドラえもんが出す。さらにその秘密道具で深夜に空の遊びを楽しもうとするが……
福島直浩脚本、そ~とめこういちろうコンテによるアニメオリジナルストーリー。自由に空の遊びを楽しむ姿を、キャラデザインの丸山宏一や田中薫といったメインスタッフ4人が作画監督をつとめ、無理なく映像化していた。
布団叩き型の秘密道具「フットンダー」は、叩いた衝撃で布団を飛ばすのではなく、布団を叩くとフワフワ浮かびあがるというもの。最初は違和感あったが、布団を乾かしてふくらませる機能と思えばいいのかな。もっとも、現在は布団叩きは中綿を消耗させるだけで逆効果とも聞くが。
そんなシンプルな設定から、状況が変転していく。のび太がひとり眠りつづけて周囲が遊びまわる風景から、のび太が気流で流されて行方不明になり、その追跡と救出で友人が奮闘し、朝になってのび太は何も知らないというオチ。そのオチもふくめて全体的にパターンにとどまるが、展開の分岐が多くて、あまり飽きずに楽しむことはできた。