今回は前後とも、記憶では2005年リニューアル以降で初アニメ化。けっこう印象深い原作で、どちらも単行本に収録されているだけに、まだアニメ化されていなかったことが意外。
「地図ちゅうしゃき」は、宿題をわすれたのび太のため、ドラえもんがこっそり秘密道具で机の上におくりこむ。それを知ったのび太は秘密道具で格安宅配の商売をしようと考える……
後期原作をアニメ化。気づかれずに物品を移動させる意味があることで、どこでもドアと差別化できているわけだが、その差別化に意味がない方向でのび太が活用しはじめるギャグがポイント。
尺にあわせるため追加されたアニメオリジナル描写は大同小異の失敗が増えただけだが、原作の物語構造を延長して笑いどころをふくらませているので、間延びした印象はない。
注射で正確に送りこむ難しさも視覚的な説得力があるし、描写をひきのばしただけで成立させるアニメ化としてよくできていた。
「おもかるとう」は、体重が軽くてジャイアンに尻相撲で負けたのび太が、帰宅すると母親にやつあたりされる。ダイエットがうまくいかないと知ったドラえもんが重量を軽くする秘密道具を出す。のび太はそれをつかって……
中期原作を現監督の小倉宏文コンテと、小西富洋作画監督でアニメ化。さすがにアニメーションとしては悪くない。
しかしサブタイトル前にアバンタイトルがつくことにはじまり、監督なのに最もフォーマットを無視しているのは良いのか悪いのか。とりあえず演出が作品のSF的リアリティを壊すほど過剰気味になるのは好きではない。アニメオリジナルのジャイアンズと敵チームの一対一勝負を2D格闘ゲーム風にしたカットは面白くはあったが、雰囲気があっているかというと……
樹上のカナリアをつかまえるため体を軽くして風船で浮くアニメオリジナル描写の試行錯誤は、失敗もふくめて悪くない。しかしカナリアがとまっている樹木が太すぎて、原作どおりに重くして倒すことに説得力がない。正確にいえば、樹木が倒れるほど重くなったらカナリアは飛べないどころか歩行もまともにできないだろう。ドラえもんが樹木の下敷きになるアニメオリジナルのギャグは悪くないが、それをやりたいならカナリアと樹木の両方を重くする描写にすれば良かった。
脚本の綿種アヤは『妖怪シェアハウス』でデビューした新人で、『ペンギン・ラブストーリー』というドキュメンタリバラエティのアニメパートの経験はあるが、普通のアニメ脚本は初のよう*1。良くも悪くも普段とアレンジぐあいが同じくらいで、他スタッフによる手なおしが入っているのだとしても違和感はなかった。
