「もどれウマタケ」は、ひょんなことからドラえもんが秘密道具の馬を5匹も飼うことになってしまう。のび太も苦労することになり、しずちゃんやスネ夫たちにも協力してもらうが……
既存の秘密道具をつかったアニメオリジナルストーリー。丸山宏一作画監督で、普通の馬とくらべればシンプルなデザインとはいえ、5頭もの特殊な生物が動きまわるストーリーをちゃんと手描きアニメで成立させていることに感心。
そして餌のニンジンを確保するため、予想していた日曜農業セットではなく、提案したスネ夫の父に空き地を借りて畑をつくる。余計な苦労という感じはあるが、ウマタケを説得して農耕馬として働かせる情景はシュールで良い。その後のウマタケ飼育をひきうけたジャイアンが、餌代のためチャリティーコンサートを開くわけだが、イントロ部分だけとはいえジャイアンがちゃんとふりつけどおりに動いて、バックダンサーのウマタケも音にあわせてタップダンスするアニメーションが楽しめた。
ただ細かい描写だが、今どきの子供たちは布団たたきを理解できるのだろうか。布団はたたくべきではないし布団たたきはなでるようにゴミを落とすためにつかうという考えが今では定着していそうに思うのだが。
「まあまあ棒」は、ジャイアンの理不尽な暴力にさらされるのび太のため、怒りをおさえる秘密道具をドラえもんが出す。そしてのび太は周囲のためにも秘密道具を活用するがスネ夫に盗まれてしまい……
リニューアルした2005年に寺本幸代コンテ演出で映像化した原作をリメイク。本来は2022年1月に放映予定だったが、なぜか再放送にさしかえられ*1、今回まで延期された。
実のところ放映延期した当時は過敏すぎる自主規制ではないかと思っていたが、ドラえもんがジャイアンの危険度を火山の爆発でたとえて背後に噴火のイメージが映ったり、ジャイアンを刺激しないよう運ぶシーンのひとつに火山のディザスター映画ポスターがあったりして、納得せざるをえなかった。
アニメオリジナル描写として、被害を出さないようにしようとする決意を増すため、ジャイアンを公園で発見するようにアレンジ。周囲の平和な人々と爆発寸前のジャイアンのコントラストを見せつつ、被害者が多数出かねない恐怖と、その周囲の人々の動きがジャイアンを刺激しかねない危機をもりあげる。そこから空き地まで移動させる描写をひきのばし、慎重な爆弾処理のようなドラえもんたちの苦労を描くドラマを新たに描いていった。
「デカチンキ」が今回のドラドラMiniシアターで、小倉監督がコンテ演出。見かけだけサイズがおおきくなる描写はビジュアルとして根源的な面白味があったが、アリが大きく見えておびえるオチは弱い。このアニメなりにリアルなアリを作画しているが、もっと写真みたいに精緻なディテールで作画したほうが異化効果が強調され、生物的な恐怖感も増したのではないだろうか。