薬師寺さあやは母れいらとファンタジー作品で共演をはたす。しかし撮影にクライアス社が介入し、見学していた仲間たちとともに映画の世界へとらわれることに……
坪田文シリーズ構成の6連続脚本。過去作でも何度かあった物語世界にとらわれるパターンに、これまで役割を演じてきた母娘のドラマをのせて描く。
メインキャラクターが仮装するコメディチックな前半から、ライバルや母の求めとは違う道を少女が選ぶシリアスな後半へと物語が流れていく。ライバルとの対立を演劇的な剣戟として見せたり、演者が互いを求める心情から、TVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を思い出したりも*1。
今回の作画監督は美馬健二で、どこかキャラクターを描きなれていない感があるが、いつもよりハイライトが多くて作画がきらびやかで、芸能をテーマにした物語にはあっている。
そしてそれほど芸能の道を魅力的に描けたからこそ、医療の道を進む決意もはえる。その未来を組織的に閉ざしてきた日本社会の問題が暴かれつつある現在だからこそ、その道は本当は開かれているのだと描くことの気高さが深く印象に残った。
ただ、薬師寺さあやの不器用さをピックアップして、芸能と医療の一方だけを選択するドラマは良かったのだが、芸能の選択肢を象徴するライバルと母はひとりのキャラクターに集約しておくべきだったと思う。
これまで薬師寺さあやが医療やその周縁にかかわるエピソードは多かったが、かわりに芸能関係のエピソードが少ないために、ライバルと母の出番がどちらも少なくてキャラクターが薄い。
逆にいえば、ドラマの厚みを出すため今回にライバルと母を同時に出したかのかもしれないが、違う道を進むという結論が強固で変わらないため、あまり変化がなくて効果を感じられなかった。