法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』のび太は世界にただ一匹/地平線テープ

今回も前後とも原作を忠実にアニメ化。うえだしげるが演出として初参加し、プロダクションアイジー関係のシグナルエムディが制作協力。


のび太は世界にただ一匹」は、のび太絶滅危惧種の問題を知り、それを救うための秘密道具で手近な動物を守っていく。しかし自身が守ってもらえないことに嫌気がさして……
2009年*1に中編アニメにふくらませた原作を、今回はアレンジを少なく素直にリメイク。後期原作らしく環境保護テーマかと思いきや、のび太のアイデアからまったく違うテーマへ移行していく展開があらためて面白い。
ちょっと興味深いのは絶滅危惧動物をドラえもんが列挙するなかに、クロマグロが入っていたこと。子供向け番組に留保なく描写されるくらい、資源状況の悪化が明白になったわけだ。
のび太が追いかけまわされるクライマックスをふくらませて、珍しい動物にエサを無理やりやろうとしたり、肉体の一部をもらおうとするグロテスクな描写を入れていたのも、そう悪くなかったと思う。
映像面はふしぎと違和感が全体的にある。特に背景のパースのゆがみが演出の意図なのかレイアウトの甘さなのか判断しづらい。クライマックスの商店街あたりの描写はコンテともども良かったのだが。


「地平線テープ」は、地平線が何かを知らなかったのび太に実感させるため、地平線をつくってやる。さらにその広大な空間で遊べるようにと友人をさそったわけだが……
2007年に映像化した原作のリメイク。前回につづいて山口晋がコンテに連続登板。いくら30分番組の半分だけとはいえ、手が早い。
ローラースケートで楽しんだり、ラクダロボットに車輪走行機能を足したりして、作画リソースを節約しつつ空間の広がりを表現するアレンジがさえる。風景が地面と空の2色だけというシンプルさなので、多用される背景動画も無理を感じさせない。オチのしずちゃんの裸の隠しかたも技巧的だった*2
ただ、視聴者が飽きるのを恐れてか、地平線空間にとりのこされて老人になるイメージなどのギャグが多すぎるのは好みではない。今回のクライマックスだけは情景に動きをつくらず、出口のない恐怖を単調さで強調するつくりにしてほしかった。

*1:『ドラえもん』のび太は世界にただ一匹 - 法華狼の日記

*2:しずちゃんの裸を見せないアレンジとして、私が考えたアイデアを説明すると、のび太たちが助かる前にしずちゃんがテープを外してしまうというものがある。原作を知っている視聴者にとってサプライズとなるだろう。そしてさまよいつづけたのび太たちは、恐ろしげな呻き声を聞く。それはしずちゃんにテープをもらい、練習のため地平線空間で歌っていたジャイアンだった……というのがオチ。自画自賛になるが、悪くないアレンジだと思うが、いかがだろうか。